2020 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経原発悪性リンパ腫の発症を支持する脳内免疫環境細胞の同定
Project/Area Number |
19K17820
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
服部 圭一朗 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (10832024)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 中枢神経原発悪性リンパ腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系原発悪性リンパ腫(Primary central nervous system lymphoma: PCNSL)は脳内に原発する悪性リンパ腫で、殆どの症例はびまん性大細胞性B細胞リンパ腫 (Diffuse large B cell lymphoma; DLBCL)の病理形態を示す。 ゲノム解析を通じて、約70%の患者において腫瘍からL265P MYD88変異が認められることを確認した(British Journal of Haematology 2016)。全身性DLBCLにおいても同様の遺伝子変異は報告されているものの、それらと比較するとPCNSLにおける変異頻度のほうが各段に高いことが示された。特に免疫異常に関係する遺伝子の変異(B2M、CD58、HLA-A/-B)や、PDL-1/PDL-2の発現上昇やゲノム増幅をPCNSLにおいて高頻度に認めたことから、全身性DLBCLとの遺伝子型と表現型の違いの原因として、脳内の特殊な免疫環境が影響しているという仮説を立てた。 その検証のために、新規核酸定量システムnCounterを使用して40症例のサンプルに対してRNA定量解析を行い、腫瘍細胞及び環境因子に関連した遺伝子発現のレベルを確認した。並行して、DLBCLで高頻度に変異が見られる遺伝子をターゲットとして、同一サンプルに対して変異解析を行った。 現在、PCNSLの微小環境の解明のため、遺伝子変異と免疫細胞の分布パターンとの関連について解析中である。解析の際には、Newmanらの開発した、各細胞腫の構成比を推定する手法であるCIBERSORT や、東大医科研のスーパーコンピューターSHIROKANEを用いて小川、宮野らが開発したパイプラインであるGENOMON を用いて解析を行った。いずれの解析技術も申請者はすでに確立し、一部のサンプルについてはデータを得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当院保管の中枢神経原発悪性リンパ腫の保存サンプルからDNA及びRNAを抽出し、それらを利用した解析を行った。すでに保存してあるサンプルのうち、40サンプルに 対する解析がほぼ終了しており、現在は各種臨床情報や、過去にそれらのサンプルに対して行った遺伝子変異データなどを集め、DNA&RNA解析によって得られた遺伝子発現量とデータとの関連を調べている。
|
Strategy for Future Research Activity |
中枢神経原発悪性リンパ腫の腫瘍細胞と腫瘍以外の細胞をセルソーターによって分離した上で、10XGenomicsを利用したシングルセルRNAシーケンスを行うことで、特定の発現プロファイルをとる微小環境細胞の分布をシングルセルレベルで明らかにする。当院における年間のPCNSLの新規発症症例数が12~15症例程度であるため、これらの新鮮なサンプルを使用したRNAシークエンスは年間で5症例程度を見込んでおり、同時にこれらの細胞分画についてはPCNSLでの高頻度に変異が見られる30遺伝子について変異解析を行い、変異の結果と微小環境細胞の分布を調べる。
|