2021 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム多型が白色脂肪組織の褐色化能を規定するメカニズムの網羅的解析
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19K17976
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平池 勇雄 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (30813935)
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Project Period (FY) |
2021-03-01 – 2023-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / 遺伝子多型 / ゲノム-エピゲノム連関 / 肥満症 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色脂肪細胞はミトコンドリアにおける uncoupling protein-1(Ucp1)の機能を介して熱を産生しエネルギーを消費する点において、主にエネルギーの貯蔵を担う白色脂肪細胞とは対照的な組織である。また白色脂肪細胞の一部は寒冷刺激や交感神経刺激に応じてUcp1陽性で発熱能を有する誘導型褐色脂肪細胞に変化し得る。既に褐色脂肪細胞の活性がBMIと負に相関し加齢に伴って低下することが知られており、褐色脂肪細胞の数や働きを高めることが「エネルギー摂取の抑制」ではなく「エネルギー消費の促進」に基づく肥満症や肥満2型糖尿病の新しい治療法につながり得るとして期待されている。申請者は褐色脂肪細胞の分化を制御する鍵因子として転写因子NFIA (nuclear factor I-A)を同定し解析してきた(Hiraike Y., et al. Nature Cell Biology 2017, Hiraike Y., et al. PLoS Genetics 2020)。ヒト褐色脂肪細胞の活性には個人差が大きいことが知られており、マウス近交系においても系統間の差が大きいためゲノム多型の影響が想定される。本研究において申請者は太りやすく褐色脂肪細胞活性の低いC57BL/6Jマウス、太りにくく褐色脂肪細胞活性の高い129X1/SvJマウスおよびこれらを交配させたF1をモデルに網羅的クロマチン構造解析を行い、ゲノム多型がゲノム-エピゲノム連関を介してUcp1の発現を規定するメカニズムを同定した。その知見をヒト褐色脂肪細胞にも応用することで、肥満症や肥満2型糖尿病における精密医療の実現を目指すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の主要部分である太りやすく褐色脂肪細胞活性の低いC57BL/6Jマウス、太りにくく褐色脂肪細胞活性の高い129X1/SvJマウスおよびこれらを交配させたF1をモデルに網羅的クロマチン構造解析を完成させ、ゲノム多型がゲノム-エピゲノム連関を介してUcp1の発現を規定するメカニズムを同定し論文投稿中である。また、ヒト褐色脂肪細胞の活性と肥満や肥満2型糖尿病の関連についても大規模バイオバンクのデータを用いた解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文を完成させるとともに、Ucp1非依存的な褐色脂肪細胞の機能を規定するゲノム-エピゲノム連関についても検討する。大規模バイオバンクのデータを用いた統計解析と統合すべく、ヒト試料を用いたゲノム-エピゲノム連関の実施を目指していく。
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