2020 Fiscal Year Research-status Report
神経芽腫における脱分化脂肪細胞由来exosomeを用いた分化誘導療法の新規開発
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19K18072
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
星 玲奈 日本大学, 医学部, 助手 (20793772)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / DFAT |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、神経芽腫細胞に対するDFAT exosomeの抗腫瘍効果について確認するために、MYCN非増幅であるヒト神経芽腫細胞株のSK-N-SHにDFAT exosomeを添加して培養し、神経芽腫細胞の形態変化と分化の有無を検討した。DFAT exosomeを添加して培養したSK-N-SHは、DFAT exosomeを添加せずに培養した時と比べて、神経突起伸長が認められた。また、Real-time RT-PCR法で神経分化マーカーとしてNeurofilament(NF)とβⅢtubulin(TUBβⅢ)の遺伝子発現解析を行ったところコントロール群と比べて、DFAT exosome添加群でNFおよびTUBβⅢののmRNA発現上昇を濃度依存的に認めた。このことから、DFAT exosomeは神経芽腫細胞に対して分化誘導効果を持つ可能性が示唆され、その分化誘導効果はDFAT exosome濃度依存的に増強する可能性が示唆された。 今年度は本研究を行うにあたり先行実験として行った、DFATの培養上清を用いた神経芽腫細胞の分化誘導実験において、分化誘導は確認されたが細胞増殖抑制効果が十分に得られなかったことに対し、その原因を探るべく以下の実験を行った。 神経芽細胞腫細胞の細胞増殖シグナル伝達経路は、中間キナーゼとして存在するPI3K / AKTによって活性化されるため、 PI3K活性の阻害が増殖能と神経芽細胞腫細胞の分化に影響を与えると考えられる。神経芽腫細胞株NB9細胞をPI3K阻害剤で処理してPI3Kを阻害し、DFAT-CMまたは対照培地で培養した。培養3日目にWST-1アッセイで細胞増殖能を評価したところ、PI3Kの選択的阻害剤投与により、DFAT-CMによって促進されるNB9細胞の細胞増殖能力を有意に抑制した。これにより、PI3K阻害剤がDFAT-CMの細胞増殖促進作用を抑制する効果があることが示唆された。同様の実験を行いPI3K阻害剤を添加したDFATーCMの分化誘導効果を確認するため神経芽細胞腫細胞の神経突起伸長を分析したところ、神経突起は対照群と比較してDFAT-CM群で有意に伸長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DFAT由来のexosomeの培養実験から、分化誘導効果は得られたが、想定された細胞増殖抑制効果が思うように得られなかったため、その原因を探るべくPI3K阻害剤を併用した増殖抑制実験を行った。それにより研究計画はやや遅れたが、DFAT-CMに含まれる細胞増殖促進因子はPI3Kを併用することでその増殖促進効果を抑制することができるという新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験でDFAT exosomeは神経芽腫細胞に対して分化誘導効果を持つ可能性が示唆され、その分化誘導効果はDFAT exosome濃度依存的に増強する可能性が示唆されたため、次年度ではDFAT exosomeの細胞増殖抑制効果について検討する。分化誘導は得られつつも細胞増殖抑制効果が得られない場合は、DFAT-CMでの実験同様にPI3K阻害剤を併用することで細胞増殖抑制効果を得ることが可能か検討する。
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