2019 Fiscal Year Research-status Report
Crosstalk between linear ubiquitin and EGFR signaling pathways in lung cancer
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19K18203
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
中澤 世識 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60791978)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | EGFR / LUBAC |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌は国内外共に注目度の高い研究分野であるが、依然として原因遺伝子が不明の肺癌が多く存在し、これらに対する新規治療標的の同定が切望されている。また近年急増しているEGFR変異陽性肺癌に関して分子標的薬であるEGFR-TKIが著効するが、数年で耐性が出現するため、EGFR-TKIに対する耐性メカニズムの解明と克服も重要な課題である。申請者は新規性の高い直鎖状ユビキチン(M1-Ub)とその合成酵素であるLUBACに着目し、先行研究と予備実験からM1-Ub/LUBACシグナル経路は肺腺癌、及びEGFR経路との関連があることを見出した。これを踏まえ、本研究では肺癌におけるM1-Ub/LUBACの詳細な機能解析とEGFR経路とのクロストークのメカニズム解明を目的とする。さらに、LUBACの阻害剤を用いて肺癌の発生、進展、転移機構における影響を解析し、肺癌におけるM1-Ub/LUBACシグナル経路の治療標的としての有用性を明らかにし、肺癌治療への臨床応用の橋渡しを目指す。 初年度はLUBACがEGFR経路に及ぼす影響を解析し、LUBACノックダウンで得られた結果をCRISPR/Cas9を用いて作成したノックアウト細胞や、LUBACの阻害剤として同定されている薬剤を用いて多角的に検証した。その結果、ノックダウン、ノックアウト、阻害剤使用下で、EGFRシグナル経路への影響として同傾向の結果が得られている。一部結果に解離があるため、その差異や原因を明らかにすることでより詳細なメカニズム解明に繋がる可能性がある。さらに、EGFRシグナル経路への影響を網羅的に捉える為に、transcriptome解析を行った結果、LUBACとEGFR経路の橋渡しとなり得る分子も同定した。今年度は基本的には当初の研究計画に沿って研究を遂行するが、今回新たに同定された分子に着目して、より詳細にその機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では計画に従い、以下の3点を中心に研究を遂行している。特に初年度は[1][2]について研究を進めた。 [1] M1-Ub/LUBACとEGFR経路とのクロストークを分子レベルで解析 [2] M1-Ub/LUBACの阻害剤を用いて肺癌の新規治療標的としての可能性を追求 [3] 肺癌細胞株で得られた知見を肺癌切除検体で検証し、実臨床への橋渡し 計画[1]に関しては EGFR変異陽性細胞株を対象にLUBAC複合体の構成因子ノックダウンを行い、EGFR経路への影響をwestern blot、qPCR、invasion/proliferation assayで解析した結果、EGFR経路の活性化は有意に抑制されていた。CRISPR/Cas9法を用いてLUBAC構成因子のノックアウト細胞を作成し、EGFRシグナル経路の解析を行ったが、transientなノックダウンと一部類似する結果がwestern blot、invasion/proliferation assayで得られた。またトランスクリプトーム解析(CAGE解析)を行い、EGF刺激後にLUBACの抑制が影響を及ぼすシグナル伝達経路、及び標的となりうる分子Aを同定した。 計画[2]に関しては LUBAC阻害剤を用いて、M1-Ub/LUBACシグナル経路を抑制し、M1-Ub/LUBACシグナル経路の治療標的としての有用性を、EGFR変異陽性肺癌株で検証した。特に抗腫瘍効果をinvasion/proliferation assayで確認し、LUBACノックダウンと一部類似した結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画に沿って進めるが、特に昨年度CAGE解析で同定されたLUBAC-EGFRに関連する分子Aに着目し、薬剤投与や中和抗体を用いて実際にその分子がEGFRシグナル経路に影響を及ぼしているかを検証する。これにより分子AがLUBACとEGFRシグナル経路のクロストークに関係しているか、どの様な分子メカニズムが背景にあるか、より詳細に解析する。 また、計画書でのテーマ[3]に関しては、標的タンパクやシグナル経路の活性化を臨床検体で検証する。具体的には肺癌切除検体を対象に免疫染色、qPCRを行い、標的タンパクの発現量などを評価する。さらに、患者データベースの臨床病理学的因子との関連を解析する事で悪性度・再発・予後との関係を解明し、実臨床におけるM1-Ub/LUBACシグナル経路の有用性を検証する。
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Causes of Carryover |
初年度の後半で研究内容がtranscriptome解析から得られた結果の検証実験となった。特にWesternやqPCR、ELISAなど、既に購入していた試薬や実験器具で遂行が可能だった為、次年度使用額となった。
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