2021 Fiscal Year Research-status Report
吸入麻酔薬の血中および脳内濃度の簡便な測定法の開発と臨床への応用
Project/Area Number |
19K18231
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷 由理 北海道大学, 大学病院, 助教 (20626121)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 吸入麻酔薬 / Desflurane / Sevoflurane / Isoflurane / 麻酔薬濃度 / 脳内ATPase活性 / 作用温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内ATPase系に対する全身麻酔薬の作用について、前年度までの実験に加え、酵素を新たに精製し、条件を変えて定量的に解析した。 ウサギおよびラット脳から精製したNa,K-ATPaseの活性を、ATPの加水分解の結果生じたPiをChifflet法により定量して測定することにより、ATPase活性に対する desflurane、sevofluraneおよび isofluraneの作用を評価した。確立していたマイクロチューブを用いた閉鎖系における実験方法を継続した。マイクロチューブ内でウサギおよびラット脳のNa,K-ATPaseを含む反応液に各種吸入麻酔薬を加え、ATPase加水分解反応を開始した。密栓した状態で一定時間(30分、60分、6時間、48時間)反応させた。その反応停止後に試験管内でChifflet法に従って定量し、吸光度測定により酵素活性を評価した。 結果として、Na,K-ATPaseは4℃でプレインキュベーション後、ATPを添加し37℃で30分反応させるという条件であれば、各種吸入麻酔薬により概ね濃度依存的な抑制があった。それ以外の条件では、各種吸入麻酔薬による抑制傾向は共通せず、特にdesfluraneでは、低温で6時間以上の反応を行うと、活性の抑制ではなくむしろ軽度活性化を示した。全体としての酵素活性の変化量は極めて少なかった。 昨年度同様、コロナによる影響で研究活動に制限が生じたが、可能な範囲で実験を継続し、結果をまとめて論文執筆の準備を進めているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年同様、新型コロナウイルス感染の影響により、今年度も実験を積極的に進めることが困難であったが、部分的には計画に沿って実験可能であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
吸入麻酔薬の濃度測定法および閉鎖系でのNa,K-ATPaseの活性測定手法を確立できたため、論文執筆と同時進行で、他のATPaseの酵素活性測定(Ca,Mg-ATPaseなど)追加実験を視野に入れている。また、Lipid raftに存在する酵素という立場から、Na,K-ATPaseに対する作用を再検討する。これまでの研究結果をまとめて論文投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年同様実験が大幅に制限され、予定していた実験が滞ったため、実験に必要な物品の購入を見送った。また、参加する学会はほぼオンライン開催となったり、飛行機での移動を要する学会参加自体を諦めたため、参加費や旅費は予定額より大幅に減額となった。次年度以降、実験計画の進展 により必要物品も増える予定があるため、計画的な使用を検討する。
|