2020 Fiscal Year Research-status Report
骨・軟骨特異的に発現する線維性コラーゲンの発現調節機構の解明と組織再生への応用
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19K18469
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
樋田 真理子 大分大学, 医学部, 客員研究員 (10737224)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コラーゲン / 転写 / 骨 / 軟骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
線維性コラーゲン分子は、細胞外マトリックスの主要構成成分であり、骨・軟骨細胞に特異的に発現している。また、細胞との相互作用によって直接シグナルを伝達することで、組織の発生や細胞分化過程及び機能維持を厳密に制御する重要な役割を担っている。 そこで本研究では、骨細胞においては、V型及びXXIV型コラーゲン分子、また、軟骨細胞においてはXI型及びXXVII型コラーゲン分子に着目し、これらの線維性コラーゲン分子の組織特異的な転写調節機構について培養細胞やトランスジェニックマウス等を用いて検討するとともに、関与する転写因子を明らかにすることを目的として解析を進めている。 特に、遺伝子発現において組織特異的転写調節機構であるシスエレメントに関しては、組織特異的シスエレメントの網羅的スクリーニング法により、XI型及びXXVII型コラーゲン分子において軟骨特異的エンハンサー領域が見出されたことから、その生体内での機能を解明するため、関与する転写因子の同定を進めている。また、XI型コラーゲンにおいては、エンハンサー近傍に確認されたサイレンサーについてあわせて解析を進めることで、コラーゲン分子の包括的な作用機序を明らかにする。 さらに、RNAの新機能に着目し、各コラーゲン分子(V/XI/XXIV/XXVII)の新たな転写・翻訳調節メカニズムを明らかにすることにより、骨格形成異常疾患等の治療及び組織再生への応用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
軟骨細胞において、XI型コラーゲン遺伝子の軟骨特異的エンハンサー領域については、欠失シフェラーゼコンストラクトを作製し、領域の絞り込みを行い、その配列に基づき、エンハンサー活性に関与する転写因子の特定をEMSA等によって検証した。しかしながら、エンハンサー近傍に存在するサイレンサー部位については、関与する抑制因子の特定には至っていない。 また、XXVII型コラーゲン遺伝子の軟骨組織への関与が示唆される基本プロモーター領域については、引き続き領域を絞り込むため、長さの異なるルシフェラーゼコンストラクトを組み合わせ、ルシフェラーゼーアッセイを試みている。さらに、いくつかの特定の配列に着目し、変異を加えたルシフェラーゼコンストラクトを作製し検討を行っているほか、OverexpressionやsiRNAによって検討を行っているが、領域の特定及び転写因子の同定にはいまだ至っていない。また、データーベースを用い、配列から予想される転写因子の候補の精査をあわせて行っている。一方、軟骨特異的エンハンサー領域については、領域を特定するため、引き続きプロモーターとイントロンをつないだルシフェラーゼコンストラクトを用いルシフェラーゼーアッセイを試みるほか、さらにEMSAやChip Assay等の複数の実験系により確認する必要があるため時間を要する。以上のことより進捗状況はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
軟骨細胞において、XXVIIコラーゲン遺伝子については、引き続き、基本プロモーター領域及び軟骨特異的エンハンサー領域をルシフェラーゼーアッセイ、EMSA、Chip Assay等により絞り込むとともに、制御する転写因子を同定するため解析を進める。あわせて、XI型コラーゲン遺伝子については、軟骨特異的エンハンサー近傍に存在するサイレンサーに関与する抑制因子をバイオインフォマティクス及び転写因子スクリーニング等で検討を行う予定である。また、生体内での機能を明らかにするため、トランスジェニックマウスへと導入するコンストラクトの作製を進め、個体レベルでの発現パターンの検討を行う予定である。 骨細胞においては、V型コラーゲン遺伝子は、骨分化誘導因子であるSp7/Osterixによって発現が増強することから、マウス胎児へのエレクトロポーレーション法等を用いて、その生体内での骨組織調節機構について解析を進める予定である。またXXIV型コラーゲン遺伝子については、骨芽細胞の網羅的スクリーニング法により、骨特異的シスエレメント領域の特定及び関与する転写因子の同定を行い、骨特異的発現調節機構について解析を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
軟骨特異的エンハンサーの転写調節機構の解析に時間を要しており、細胞培養実験にかかわる費用、付随する試薬・器具及び機械の購入費用として次年度使用するため、また、その生体内での機能解析について、トランスジェニックマウス作製のための動物実験に関わる費用として次年度使用するため予算を繰り越すこととした。 また、転写因子と複合体を形成し発現を調節するlong ncRNAの各コラーゲン分子(V/XI/XXIV/XXVII)のプロモーターへの関与について解析を進めるにあたり、マイクロアレイによる網羅的解析や次世代シーケンサーによる解析等を試みる場合が想定されるため、予算を繰り越すこととした。 引き続き骨・軟骨細胞における組織特異的転写調節機構の解析を進めるとともに、あわせて骨・軟骨細胞の分化誘導機能においての各コラーゲン分子の役割について解析を進めることにより、関与する因子と骨格形成異常疾患等の関連性について明らかにできるよう研究を進めていきたい。
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