2021 Fiscal Year Annual Research Report
必須微量元素セレン欠乏に注目した急性感音難聴の病態解明
Project/Area Number |
19K18720
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大越 明 東北大学, 大学病院, 講師 (70772979)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セレン / 感音難聴 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
急性感音難聴のうち原因不明のものは突発性難聴といわれ、国内では年間約35000人に発症するが、有効性が証明された治療法はなく、病態の解明と治療法の開発は急務である。本研究は、酸化ストレス防御に働く含セレン蛋白質に注目し、必須微量元素セレンの欠乏による感音難聴発症のメカニズムを明らかにし、臨床応用につなげることを目的としたものである。 本研究は、マウス遺伝学による基礎研究と、耳毒性をもつ代表的薬剤シスプラチン投与をうける頭頸部がん患者における観察研究を併行してすすめた。まず、C56/BL6マウスを飼育し、4週齢から通常餌と低セレン餌の2群にわけてそれぞれ飼育し、4週間(8週齢)および8週間(12週齢)経過した時点で解析を行なった。音響暴露後にABRにて聴力評価した結果としては、低セレン餌の飼育のみでは、通常餌と比べてABRの値に有意な差は認められなかった。臓器特異的セレン遺伝子欠失マウスの先行研究において、肝臓や脳、マクロファージにおけるセレン欠失は、同じく酸化ストレス防御に働く転写因子Nrf2とその標的遺伝子群の活性化が起こり、セレン欠失を代償することが知られている。そのため、Nrf2欠失マウスを低セレン餌で飼育して、同様の検討を行うことにした。現在、実験を続けているが、今のところ安定した結果が得られておらず、仮説の検証は途中である。 一方、シスプラチン投与をうける頭頸部がん患者を対象とした観察研究は、治療前と治療後3ヶ月において、聴力検査とともに血清セレン値の測定すると同時に、Nrf2遺伝子多型も調べることとした。院内の倫理申請(2018-1-1011)で承認を得た後、文書で観察研究の説明と同意を得て、観察研究を開始した。目標症例数は5年間で100症例を設定しており、現在3年経過した時点で59例の登録が得られており、順調に症例集積がすすんでいる。
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Research Products
(2 results)