2019 Fiscal Year Research-status Report
神経支配が腫瘍微小環境の形成と腫瘍の進展に及ぼす影響の解明
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19K19160
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 沙織 岡山大学, 大学病院, 助教 (80796467)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / 腫瘍微小環境 / 骨髄移植マウス / 神経と腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経分布は腫瘍の拡大様式に大きく関わり、腫瘍の進行度や予後を病理学的に診断する際の評価項目に含まれているが、腫瘍実質の増殖に対する神経の直接的な作用は不明な点が多い。申請者はこれまでの研究において、腫瘍の浸潤による間質の反応が、腫瘍の性格を規定する因子に影響することに気付いた。さらに組織傷害による末梢神経の活性化が骨髄由来細胞を傷害部局所へ動員し、骨髄由来細胞が様々な細胞に分化する現象に着目し、腫瘍の存在下で活性化した神経により骨髄由来細胞が腫瘍組織へ動員され、様々な間質細胞に分化して腫瘍微小環境を形成することが腫瘍進展に重要な役割を果たすと考えた。 平成31年度では、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞を用いて野生型マウスに骨髄移植を行った。GFPマウスと同系の野生型マウスにX 線照射を行った後、GFPマウスから採取した骨髄細胞を野生型マウスに移植することにより、GFPの発光を標的にして骨髄細胞の追跡が可能なマウスを作製した。さらに、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株であるHSC2やHSC3をヌードマウスの背部皮下または頭部皮下に移植することで担癌モデルマウスを作製した。3~4週間後に腫瘍を摘出し、摘出した腫瘍からプレパラート標本を作製し、腫瘍間質に着目して画像解析システムを用いつつ病理学的精査を行った。 神経の活性化が腫瘍微小環境の構築を導くのであれば、その過程を阻害することにより腫瘍抑制が可能となる。今後はGFトランスジェニックマウス由来骨髄細胞移植マウスにヒト口腔扁平上皮癌細胞株を移植して担癌マウスを作製し、神経と腫瘍の関係について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究により、GFP トランスジェニックマウスの骨髄細胞を野生型マウスに移植し、GFPの発光を標的にして骨髄細胞の追跡が可能なマウスを作製することが可能となった。さらにヒト口腔扁平上皮癌細胞株であるHSC2やHSC3を培養し、ヌードマウスの背部皮下または頭部皮下に移植して担癌モデルマウスを作製したのち、摘出した腫瘍からプレパラート標本を作製し、腫瘍間質に対して病理学的解析を行うことができた。 今後の検討ではヒト口腔扁平上皮癌が生着しやすいヌードマウスを使用する必要があるが、本年度はヌードマウスへの骨髄移植に苦慮した。そこで河合穂高をはじめとする岡山大学口腔病理学分野の先生に指導を受けることにより、骨髄移植マウスの確立の目処がたったため、今後はスムーズに実験を行うことが可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立した手技を応用して、神経の活性化が骨髄由来細胞の動員を介して腫瘍微小環境の形成に関与する機序を検討する。 野生型マウスにGFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞を移植したGFP骨髄移植マウスに対して、口腔癌を移植・定着させた腫瘍モデルマウスを作製する。この腫瘍モデルマウスを用いて、腫瘍組織の神経支配が腫瘍進展におよぼす効果、骨髄由来細胞の局所への誘導と分化、腫瘍微小環境構築への影響を、病理組織学的に検討する。摘出した腫瘍組織を用いて末梢神経の働きに関連して骨髄由来細胞の誘引を引き起こす因子の同定を細胞生物学的、分子生物学的解析法を用いて行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも少ない消耗品やマウスの匹数で本年度の研究目標を達成することができたため。次年度使用額に関しては次年度の消耗品および動物実験に必要なマウスや器具の購入に使用する。
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Research Products
(7 results)