2021 Fiscal Year Research-status Report
顎骨の形態決定におよぼすエピジェネティック制御の関与を探る
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19K19267
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
河野 加奈 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40780862)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 形態変化 / 軟食 / 3D / CT / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、食生活の変化というような後天的因子がどのように顎骨の形態決定に関与するのか?という、顎骨形態決定に関わる遺伝情報のエピジェネティックな制御システムを明らかにすることである。これまでに、後天的因子が顎骨の形態形成に及ぼす影響を詳細に把握するため、同成分の粉末餌と固形餌を与えることによって生じるマウス顎骨の形態変化を、マイクロ3DCTを用いた独自の形態比較手法の開発によって検出し、食餌の違いがマウス下顎骨の形態におよぼす影響を明らかにし、論文として発表した。 2020年度は、食餌の違いがマウス上顎骨の形態におよぼす影響を明らかにし、論文として報告した。これらの知見より、後天的因子に伴う咀嚼活性の違いが骨表面上の部位特異的応答にどのように影響し、マウス顎骨の3次元的な成長にどのように影響するのかという定量的所見が明らかとなった。 さらに、咬筋組織の性質が、粉末餌では遅筋の性質が増し、Myh遺伝子群の発現様態に変化が生じることを見出しており、軟食を与えたマウスと硬食を与えたマウスの咬筋のRNAを用いてマイクロアレイを行った結果、これらの刺激に応答する遺伝子の同定と、 同遺伝子のクローニングならびにリコンビナントタンパク質の精製に成功した。発現量の異なる遺伝子発現が特定の領域に集中していることから、クロマチン構造変換などのエピジェネティックな制御が行われている可能性が高い。同部のゲノムをクロマチン解析の手法の一つであるFAIRE法で解析したところ、近接領域のゲノムがクロマチンから遊離していることが確認されたが、より安定した結果を得るためにクロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、食生活の変化というような後天的因子がどのように顎骨の形態決定に関与するのか?という、顎骨形態決定に関わる遺伝情報のエピジェネティックな制御システムを明らかにすることである。2020年度には、後天的因子が顎骨の形態形成に及ぼす影響を詳細に把握するために、マイクロCTを用いた上顎骨の3次元的な形態解析手法を新たに開発し、European Journal of Orthodonticsにて論文報告した。これらの知見より、後天的因子に伴う咀嚼活性の違いが骨表面上の部位特異的応答にどのように影響し、マウス上顎骨の3次元的な成長にどのように影響するのかという定量的所見が明らかとなった。また、固形餌と粉末餌のそれぞれで飼育したマウスから採取した咬筋サンプルにおいて、著しく発現部位に差異を認めるゲノム上の領域を特定したが、そこから発現していると考えられる転写産物に関する情報はほぼなく、発現量の異なる遺伝子発現が特定の領域に集中していることから、クロマチン構造変換などのエピジェネティックな制御が行われている可能性が高い。そのため、クロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証する予定であるが、マウス咬筋の組織培養に時間を要しており研究に遅れが生じている。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、研究発表、意見交換等の機会が減っていることも研究に遅れが生じている1つの要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の段階で、後天的因子が上下顎骨の形態形成に及ぼす影響を詳細に把握することが出来ている(下顎骨:Frontiers in Physiologyにて発表, 上顎骨:European Journal of Orthodonticsにて発表)。 また、軟食を与えたマウスと硬食を与えたマウスの咬筋のRNAを用いてマイクロアレイを行い、これらの刺激に応答する遺伝子の同定と、 同遺伝子のクローニングならびにリコンビナントタンパク質の精製に成功している。発現量の異なる遺伝子発現が特定の領域に集中していることから、クロマチン構造変換などのエピジェネティックな制御が行われている可能性が高い。そのため、クロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証する。さらに、特定領域から発現しているmRNAの情報を明らかにするため、次世代シーケンサーを用いたRNAシーケンス法を用いて、咬筋組織において本領域より転写産生されたmRNAのエクソン構造と遺伝子配列を同定する。本領域からの転写産物が検出されたという情報はこれまで存在せず、哺乳動物の咬筋組織に特異的に発現する遺伝子である可能性もある。そして研究が順調に進展した場合、同定された遺伝子の機能解析に進む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、研究協力者である大阪大学大学院歯学研究科顎顔面口腔矯正学教室との往来および、研究成果の発表、意見交換等を行う予定であった学会等への参加が困難であったため、次年度使用額が生じた。 マウス咬筋の組織培養に時間を要しているため、次年度にこれらを円滑に実施するために必要なキット等の購入費用および学会参加費に充当する。
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