2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of simultaneous analysis of inorganic anions by LC/MS
Project/Area Number |
19K19491
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
岡田 侑己 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (10822067)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 誘導体化 / 反応開発 / 液体クロマトグラフィー / 質量分析 / 微量拡散 / デバイス開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体試料や飲料に含まれるシアン等無機アニオン類の同定・定量は、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)と分光分析をを組み合わせて行われてきた。本研究は、液体クロマトグラフィー(LC/MS)を使用してこれを行うことで、感度・スループットの向上と装置負荷の低減を目指すものである。 令和元(平成31)年度は以下の研究を行った。 ・高効率かつ簡便な前処理法の開発:無機アニオン類は水溶性が高く、血液等からの抽出処理は概して困難である。そこで、微量拡散法による血中シアン化物の定量的な回収を目指し、従来のコンウェイ拡散器を改良した新デバイスを開発した。本手法は他の塩基性アニオン類の前処理にも有効だと考えられる。 ・既存法のLC/MSへの適用検討:既存の無機アニオン類スクリーニングに適した手法としてペンタフルオロベンジル(PFB)化GC/MSが知られている。分析対象アニオン類のPFB化体のLC/MSでの分析を試みたが、シアン化物やアジ化物の誘導体は検出されなかった。化学合成した誘導体について、エレクトロスプレーイオン化(ESI)及び大気圧化学イオン化(APCI)による直接分析を試みたが、いずれも検出ができなかったため、他の反応剤を検討することとした。 ・既存法と類似した試薬での検討:一価アニオンのPFB誘導体は低極性でLC/MSでの分析に向かないと推測し、より高極性な臭化ベンジル置換体による誘導体化処理を行い、GC/MSによる検出を試みたが、いずれも全く反応しないか、PFB化と比べ大きく反応性が劣る結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、既存の反応剤及び類似化合物による誘導体化を試みた。しかし、合成した標品を含め、LC/MSによる検出においては期待する結果を得ることはできなかった。副生成物の発生が原因とは考えにくい状況であり、機構解析にも適さない結果であった。 一方で、生体試料を分析する上で不可欠な前処理法の開発に成功し、一定の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
既存法である臭化ベンジル置換体による誘導体化が困難であると推察されたため、芳香族求核置換反応等、異なるメカニズムでの誘導体化を行い、LC/MSでの検出可否を検討する。 新たにイオンクロマトグラフィーによる無機アニオン類の直接分離を行い、質量分析による一斉検出ができるか検討する。本法においても、シアン化物などの検出が困難とされているものについては、誘導体化を試みる。
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Causes of Carryover |
計算化学環境を構築する予定でいたが、計算に適した反応結果が得られなかったため、コンピュータの購入等を見送った。また同様の理由で、多数のLC/MS分析を行うためにカラム等を計上していたが、見送りになった。前処理法の開発にあたって使用した物品はいずれも安価であり、また研究室内に大量の在庫があったため、追加の購入は必要とならなかった。感染症の流行により学会等の出張が中止となったことによっても余剰金が生じた。 コンピュータやカラム等の消耗品については、次年度に購入予定である。
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