2021 Fiscal Year Research-status Report
オキシトシンの効果に着目した心地良さをもたらすタッチング手法の解明
Project/Area Number |
19K19493
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
工藤 ひろみ 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (50552684)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2023-03-31
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Keywords | タッチング / 軽擦 / 上腕 / 背中 / 自律神経 / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オキシトシンの分泌を促すタッチング手法について実験研究で解明するとともに、看護学生を対象とし臨地実習におけるタッチングの介入方法を提案できる基礎資料を作成することを目的としている。 今年度はタッチング手法・部位を検討するための基礎実験を行った。対象はタッチング施行者と面識がない健康な大学生17名とした(性別:男性6名、女性11名、平均年齢:21.1±0.9歳)。介入プロトコールは、安静10分、タッチング(軽擦)3分、安静20分とし、タッチング部位は先行研究で効果的とされている、上腕、背中の2カ所とした。測定指標として、生理的指標は、皮膚温(指尖・タッチ部)、血圧、心拍数、HF、LF/HFとし、主観的指標は、POMS2日本語版成人用短縮版(以下POMS2)、気分状態を評価したVAS、自由記述とした。結果は、生理的指標の経時的変化では、心拍数、HF、LF/HFに有意な変化はなかった。主観的指標では、背中においてPOMS2の項目の怒り-敵意、混乱-当惑、緊張-不安、TMD得点でタッチング後に有意に低下した (p<0.05)。VASは落ち着きの項目で背中の方が上腕に比べて有意に得点が高かった(p<0.05)。自由記述では背中の方が上腕に比べて心地よいと感じている人が多かった。生理的指標である自律神経の活動では経時的に有意な変化はみられなかったが、主観的指標の結果から、上腕より背中の方が心地よさや安心感を得やすいことが示唆された。 一方で、新型コロナウイルス感染症予防におけるタッチング施行者が防護具を着用して実験を行ったため、対象者が緊張しやすい状況だった可能性がある。また、感染拡大防止の観点から、被験者が交差することを避け、同日に2条件の介入を行ったため、1回目の介入による影響が出ている可能性もあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、学内での実験を行うことが非常に困難な状況であり、感染者数が下降傾向である8月~10月にかけて基礎実験を行った。基礎実験の結果を検討し、本実験を行う時期に再び感染が拡大しオンライン授業となるなど、学内への学生の立ち入りが禁止となり実験環境及び対象者を確保することができなかった。 また、研究計画当初オキシトシンの測定を唾液で行うことを想定しており、唾液の採取は感染のリスクが高いため、血液での採取も考え検討を重ねた。しかし、採血による苦痛や侵襲が結果に影響することを考えると、やはり唾液での採取が妥当と考えており、実験を行うタイミング、時期を考えており、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
タッチングの介入部位は基礎実験の結果から、背中へのタッチが妥当であるとわかった。今後は、基礎実験のプロトコールを元に、唾液の採取を加えタッチング施行中、施行後のオキシトシンのデータを採取し、分析を進めることとする。 また、今年度の実験でも新型コロナウイルス感染症予防対策として、タッチング施行者が防護具を着用して実験を行うことになると予想するが、防護具着用が対象者に与える生理的及び心理的な影響についても検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点からオキシトシンの測定は唾液を想定しており、今年度は新型コロナウィルス感染のリスクが高いため、基礎実験の中にオキシトシンの測定を組み込まなかった。よって、オキシトシンの測定に関する物品費などを使用することができず、次年度の使用額が生じている状況である。 また、学会の参加を計画していたが、新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から出張を行わず旅費も使用していないため、次年度への使用額が生じている。 2022年度から実験、質問紙調査を行い、データの収集、分析を感染状況をみながら順次行う予定であり、残額はデータ収集に係る消耗品、実験補助者への謝金等に使用する予定である。
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