2023 Fiscal Year Annual Research Report
患者意向調査を踏まえて開発する、看護師協働の終末期意思決定支援プログラム
Project/Area Number |
19K19568
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
長谷川 貴昭 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20798524)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アドバンス・ケア・プランニング / 緩和ケア / 終末期 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
病の早期から患者と医療者が、患者の価値観を共有し、終末期に関する話し合いを行うことをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という。海外の先行研究、特に観察研究で、ACPは患者の尊厳ある終末期療養の実現に貢献できると考えられてきた一方、近年の海外のACPの介入試験の結果からは必ずしも患者にとって良い転帰につながらないことが報告されてきていた。患者が死の準備を重要視しない、あるいは意思決定を他者に委ねる意向、個よりも周囲との和を尊重する文化もあり、ACP自体が我が国の文化になじまない可能性も指摘されてきていた。 本研究では既治療の進行・再発非小細胞肺がん患者とその介護者を対象とした多施設共同前向き観察研究を連続サンプリングで実施し、患者・介護者・医療関係者・診療録調査を縦断的に行った。200名の有効データが取得でき、統計解析の結果、以下が明らかになった。 ①患者が根治不能と正しく認識するためには、医師から病状説明を繰り返すことが寄与する可能性が示唆された。②終末期療養に関して事前に話し合いが行われたとしても、患者の終末期医療の質は改善されず、QOLや精神的苦痛の改善にもつながらない可能性が示唆された。③医師のもつ共感性は患者のQOLや精神的苦痛の改善につながる可能性が示唆された。④医師から患者へ行われた病状説明の内容は患者には十分に認識されておらず、患者が話し合いがあったと認識することで、病状理解が促進される可能性が示唆された。⑤患者と介護者の間では、抗がん薬による治療の目標や希望する療養場所が一致していないことが多く、継続的な話し合いを促進する必要があることが示唆された。これらの知見から患者・介護者にとって希望する療養を実現するためには、伝統的なACPの概念を超えた、終末期までの継続的な思いやりをもった話し合いを行う意義の重要性が示唆され、今後もさらなる研究が必要である。
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