2019 Fiscal Year Research-status Report
地域高齢者における作業ストーリーメイキングを活用したアプローチモデルの開発
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19K19862
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高島 理沙 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (70779503)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域 / 高齢者 / ストーリーテリング / ストーリーメイキング / 予防的作業療法 / 混合研究法 |
Outline of Annual Research Achievements |
作業ストーリーテリング/ストーリーメイキングは,障害を持ったクライエントの物語を引き出し,人生の再構築を支援するためのアプローチである.研究者は,地域で暮らす高齢者に対する予防的作業療法として,このアプローチを応用したプログラムを開発した.地域在住高齢者のために開発したこのプログラムの効果を,豪雪地域の冬期間において検証することを目的としたパイロットスタディーを実施した. 本研究では,介入プログラムの効果を量的,質的に検証する混合研究法を用いた.北海道内の豪雪地域A市のB高齢者サロンのメンバー22名が研究に参加した.介入プログラムは次の3つの要素で構成された.①共通の理解地平の確立,②色カードを手がかりとした作業的ストーリーテリングのためのグループワークと,より良い生活のための作業的な目標の設定,③参加者個々人で②の目標を遂行する作業ストーリーメイキング. 介入前後の量的データ分析の結果,参加者の活動性は有意に低下した一方で,認知機能とQuality of life (QOL)は有意に高まった.③で参加者がどのような経験をしたのかに関するフォーカスグループインタビューの質的データを分析した結果,参加者は,〈作業にまつわる交渉〉を行っていたことが明らかとなった.量的データと質的データを統合すると,参加者は,生活を雪に圧迫されることにより活動量が低下していた.豪雪地域の冬の生活を生き抜くために作業にまつわる様々な交渉を行うことは,認知的に高度な課題であり,認知機能の向上につながった可能性がある.作業ストーリーテリング/ストーリーメイキングを通して改めて自分が生活の中で大切にしてきた価値を認識した上で,目標とした作業を遂行しようとした結果が,参加者のQOLの向上に結び付いたと考える.今後は,プログラムをさらに改善した上で,対照群を設定した更なる効果検証が望まれる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である今年度は,パイロットスタディーの実施と学会での研究成果の発表までを行うことができた.パイロットスタディーの結果をまとめた論文を現在は執筆中である.次年度は,パイロットスタディーの結果に基づいてプログラムの改善を行う.さらに,対照群を設定した上での更なる効果検証をする予定である.研究に協力いただける自治体との調整はすでに進行している段階のため,新たな調査を次年度中に開始できる見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,パイロットスタディーの結果をまとめた論文を執筆中であるため,できるだけ早く公表できるようにする.さらに,今後は,まずはパイロットスタディーの結果に基づいたプログラムの改善を行う.さらに,対照群を設定した上での更なる効果検証をする予定である.研究に協力いただける自治体との調整はすでに進行している段階のため,新たな調査を次年度中に開始できる見込みである.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は1237円であり、概ね予定通りに予算を執行した。
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