2021 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of Stroke Risk based on Shape Classification of Retinal Vein by Using Self-Organizing Map
Project/Area Number |
19K20356
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
古賀 裕章 久留米工業高等専門学校, 制御情報工学科, 助教 (10807861)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形状分類 / 眼底 / 自己組織化マップ / 規格化 / 医用画像処理 / 脳卒中リスク推定 / 動脈硬化診断 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
眼底は人体で唯一血管を直接観察できる部位である.脳と眼は発生学上同一の部位であるため,眼底血管を観察することで,脳の血管の状態を推測することができ,脳卒中の診断や予防に活用できる.脳卒中や動脈硬化を反映した眼底血管の状態として,動脈と静脈の交叉部において,動静脈交叉現象と呼ばれる狭窄や歪みなどの形状の変化が静脈に起こる症状がある.本研究では,自己組織化マップにより,交叉部の静脈形状を自動分類し,動静脈交叉現象の重症度を推定・評価するシステムの開発を行い,脳卒中の治療や予防に活用する.令和3年度では,以下のことを行った. 1.対称性を考慮した眼底血管形状分類手法の開発:前年度までの形状分類手法では,線対称や点対称の関係にある形状が別の形状として,分類されていた.それらの形状は,動静脈交叉現象の程度を評価する上では,同じ意味を持つ形状である.新たな形状規格化を追加することにより,それらを同じ形状として分類されるように改良を行った.これにより,意味のある形状分類カテゴリの増加を実現した. 2.眼底血管形状分類手法の評価:提案した眼底血管形状分類手法について,動脈硬化の診断に用いられる形状指標の観点から評価を行った. 3.動脈硬化重症度推定手法の開発:今までは血管形状のみを用いて分類を行ってきた.この手法だけでは,動脈硬化や脳卒中と対応した分類結果が得られるとは限らない.そこで医師により評価された動静脈交叉現象の程度を答えとして学習させることにより,医師が行うような血管形状にもとづいた動脈硬化の重症度の推定が実現できる.令和3年度においては,自己組織化マップにより血管形状を分類する過程で得られたデータを入力とし,深層学習を用いて学習させることにより前述の推定を実現した.また,本手法は診断補助システムにおいて必要とされる,分類や推定における根拠の明確化を実現できるアルゴリズムとなっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,研究協力者等との対面での綿密な打ち合わせが実施できなかった.また,新型コロナウイルス流行の影響により,昨年度同様研究外の業務である講義準備や校務に多大な労力が必要であり,まとまった研究の時間が確保できなかった.これらにより,当初の予定通りの研究内容を進めることができなかった. 研究成果としては,前年度の実施できなかった研究内容である対称性を考慮した手法の開発を実施でき,形状分類についてはより実用に近づいたと考えられる. また,本研究の根幹である動脈硬化重症度推定手法を開発した.精度面において,まだ改善が可能であるため,完成とは言えないが,システムの全体としては大きな進展があったと言える. 当初想定していた全体の研究計画としてはやや遅れているが,単年度としては十分な成果を得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
1.臨床データの収集:脳卒中リスク推定に向けた形状分類手法の開発や検証には大量のデータが必要となるため,令和4年度以降においても引き続き,医師の協力を得て眼底血管画像のデータの収集に努める. 2.対称性を考慮した動脈硬化重症度推定手法の開発:前年度開発した対称性を考慮した血管形状分類手法と自己組織化マップおよび深層学習を用いた動脈硬化の重症度推定手法を組み合わせることにより,動脈硬化重症度において同じ意味を持つ「対称な形状」を同一の入力として扱う推定が可能となる.重症度推定の入力となる形状の種類は,1/4程度になる.形状の種類ごとの学習データが増加することから,形状のより細かな差異にもとづいた推定が可能となり,推定精度の向上が見込まれる. 3.経年変化追跡システムの開発:脳卒中の予防や治療効果の評価のためには,現在の評価だけでなく,同一患者の複数の眼底データから動脈硬化の程度の予測および経年変化の追跡を行う必要がある.予測においては,画像生成手法を用いた医用画像予測により将来の眼底画像を生成し,その画像に対し動脈硬化重症度推定を行うことで,脳卒中の予防に有益なシステムを開発することに取り組む.経年変化については,推定した動脈硬化重症度を表示した自己組織化マップ上での軌跡として,可視化することによって,治療効果の評価および治療計画の作成に活用できるシステムの開発を目指す. 4.実証実験に向けたプロトタイプの作成:動脈硬化重症度推定システムや経年変化追跡システムの有用性を示すためには,実際の医療現場にて使用してもらい,問題点や活用可能性を明らかにする必要がある.マイコンを用い,医療現場においても容易に使用できるデバイスの作成に取り組む. 5.研究成果の取りまとめ:研究期間の最終年度に当たるため,これまでの研究成果を取りまとめ,課題や改良可能な点を明らかにし,今後の研究に繋げる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により学会や打ち合わせがオンラインでの実施または中止となり,旅費が不要であったため,余剰が発生した. 次年度使用額の使用計画としては,新型コロナウイルスの収束の目処が立たないため,旅費を物品購入に充てることで,研究のより潤滑な遂行に活用することを予定している.具体的には,大量のデータを処理するための計算機やGPUの増強,個人情報に配慮したデータ管理手段の充実,オンライン学会への参加や医師とのさらなる綿密なオンライン打ち合わせのための準備費用,関連図書の購入などを予定している.
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