Outline of Annual Research Achievements |
本課題では, 世界初の水中に浮遊する光吸収性粒子の粒子種ごとの粒径別数・質量濃度の測定手法を確立し, 光吸収性粒子の粒子種ごとの質量濃度や沈着量, 粒径の北極広域分布を明らかにする. 本研究では, 光吸収性粒子の中でも特に, 黒色炭素粒子(BC)と黒色酸化鉄粒子(FeOx)に着目する. 本年度は, 昨年度に確立した測定法を用いて積雪試料の分析の継続とデータの解釈, さらにFeOx質量濃度の測定精度と再現性を評価した. FeOx質量・数濃度の不確かさはそれぞれ30%, 40%程度であった. 次に, 水中におけるFeOx粒子の数・質量濃度分布の再現性を調べるため, 積雪試料の融解日と融解10カ月後にFeOx濃度分布を測定した. 数・質量濃度は10%以内で一致し, FeOx粒子が水中で長期間安定であることを実験的に確かめた.北極広域に沈着したFeOx質量濃度は 0-3μg/Lの範囲であり, BCと同程度である一方, FeOx数濃度はBCに比べ100-1000倍も低かった. BCとFeOx質量濃度はアラスカ, ニーオルスン, 北シベリアで似た挙動を示し, 人為起源の影響を示唆する一方, グリーンランドでは異なる挙動を示し, 自然起源(鉱物ダストなど)の影響を受けた可能性を示唆した. 本研究課題で得た「積雪中BCとFeOx粒子の質量濃度の北極広域分布」の観測値は, 数値モデルの検証に有効であり, 雪面反射率や雪面融解度合いの予測値の信頼性を大幅に向上することが期待される. 本研究成果の科学的な重要度は極めて高く, 次回の北極協議会の作業部会の報告書にも重要な研究成果として取り上げられる見込みである. 本研究に関する成果は, 査読付き雑誌(国際誌2, 国内誌2), 複数の学会で報告(見込みも含む)した(国内:口頭3, 国際:ポスター3, 口頭2).
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