2019 Fiscal Year Research-status Report
SWI/SNFクロマチン再構成異常を標的としたATR阻害剤によるがん治療基盤確立
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19K20456
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
倉島 公憲 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (90724956)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DNA複製ストレス / ATR / SMARCA4 / Fork reversal / Mre11 / 肺腺がん / バイオマーカー / ヘテロクロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ATRはDNA複製ストレスに応答して活性化し生存に寄与する。そのため、ATRの阻害剤は正常細胞よりもDNA複製ストレスレベルの高いがん細胞に有効に作用すると考えられてきた。14種類のオミックス情報の付随した肺腺がん細胞を解析した結果、細胞の持つ内在性複製ストレスレベルがATR阻害剤感受性と相関することが分かり、興味深いことに、高感受性細胞の多くにSWI/SNFクロマチン再構成複合体のサブユニットの一つSMARCA4の欠損が認められたことから、SMARCA4とATR阻害剤の関係に注目し解析を行った。 SMARCA4野生型細胞においてsiRNAを用いてSMARCA4を発現抑制させるとDNA複製ストレスとATR阻害剤感受性の増加がみられた。逆にSMARCA4欠損細胞にSMARCA4を発現させるとDNA複製ストレスは低下しATR阻害剤に耐性を示した。 SMARCA4欠損細胞において、複製フォーク停止後のFork reversalを引き起こすSMARCAL1および不安定なreversed forkに働くヌクレアーゼMre11を阻害することにより、ATR阻害剤誘導性の一本鎖DNAが抑制された。 SMARCA4欠損細胞においてATRを阻害するとMre11は複製困難領域として知られているヘテロクロマチン領域に特徴的な核内局在パターンを示した。そこで、ヘテロクロマチンマーカーの発現量を解析すると、SMARCA4の発現抑制により増加し、強制発現により減少した。 以上より、SMARCA4が欠損していると(Ⅰ)ヘテロクロマチンが増加することでDNA複製ストレスが生じ、(Ⅱ)reversed forkにおいてMre11が過剰に働くことで一本鎖DNAが生じる、という2つの異なる理由により相乗的にATR阻害剤に効果を示し、SMARCA4欠損がATR阻害剤高感受性のバイオマーカーとなる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
siRNAによるSMARCA4のノックダウンおよびSMARCA4強制発現系を構築し、従来の測定系に加えDNA fiber法による複製ダイナミクスの評価が可能になった。また、Mre11阻害剤を用いた解析から、SMARCA4欠損細胞におけるATR阻害剤の作用点を明らかにすることができた。さらにSMARC4欠損によりヘテロクロマチンの増加がみられ、内在性DNA複製ストレスの原因の一部となることが示唆された。 以上のことから、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、SMARCA4以外のSWI/SNF複合体のサブユニットに関しても解析することでATR阻害剤感受性促進がSMARCA4独自の欠損によるかSWI/SNF複合体の異常によるのかを明らかにする。 また、今年度の解析により見出されたヘテロクロマチンの増加によるDNA複製ストレスについて、より詳細に解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、SMARCA4欠損細胞におけるATR阻害剤の作用点について、dNTPやRNA-DNA hybrid (R loop)、ROSなど様々なDNA複製ストレス誘発要因を測定する予定であったが、先行して解析したMre11阻害剤を用いた実験で顕著な結果が得られたため、Mre11の関与をより深く、複数の細胞株について解析した。そのため、他のDNA複製ストレス誘発要因を測定する試薬などは購入せず、次年度に購入する予定である。
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