2019 Fiscal Year Research-status Report
Biomonitoring and risk assessment of human health for Neonicotinoid insecticides using human urine
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19K20465
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
本田 匡人 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (80785791)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド系農薬 / 環境汚染 / バイオモニタリング / 経口暴露 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内3ヶ所(石川県・新潟県・福岡県)から2019年1-3月にかけて計109検体のヒト尿(年齢幅22-69歳:男性86名,女性23名)を収集し、同時に暴露経路を推定するための食生活などのアンケート調査を行った。ネオニコチノイド系農薬およびその代謝産物10種の尿中濃度を測定した結果、Acetamipridの代謝産物であるAcetamiprid-N-desmethyl (N-DMA)が最も高頻度で検出され(84.4%,中央値0.36 ng/mL)、それに続いてThiamethoxam (THX)が良く検出された(52.3%,0.09 ng/mL)。その他のネオニコチノイド系農薬および代謝産物の検出率はいずれも35%以下であった。3県間で総濃度・THX濃度・N-DMA濃度のそれぞれで比較を行い、新潟県>福岡県>石川県の順で濃度が高い傾向が見られたが有意な差は検出されなかった。アンケート調査の結果と総濃度・THX濃度・N-DMA濃度の比較解析を行った結果、3県全体で解析した場合、野菜を多く摂取するほど尿中濃度が増加する有意な傾向が検出され、農閑期にあたる1-3月において本農薬種の主要な暴露経路が野菜の摂食であると示唆された。また石川県のサンプルにおいて都市部と郊外部で比較を行ったが2群間で有意な濃度差は検出されず、農閑期において摂食以外の環境中からの暴露が小さいことが示唆された。今後は未分析の尿検体の濃度分析およびアンケート調査結果との比較を進めていくと同時に、尿中に含まれる各生体内物質への酸化ストレスに対応するバイオマーカーの濃度との比較解析を行い、人間への健康影響を評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1回の検体収集として、国内3ヶ所(石川県・新潟県・福岡県)から2019年1-3月にかけて計109検体のヒト尿(年齢幅22-69歳:男性86名,女性23名)を収集し、同時に暴露経路を推定するための食生活などのアンケート調査を行った。ネオニコチノイド系農薬およびその代謝産物10種の尿中濃度を測定した結果、Acetamipridの代謝産物であるAcetamiprid-N-desmethyl (N-DMA)が最も高頻度で検出され(84.4%,中央値0.36 ng/mL)、それに続いてThiamethoxam (THX)が良く検出された(52.3%,0.09 ng/mL)。その他のネオニコチノイド系農薬および代謝産物の検出率はいずれも35%以下であった。3県間の濃度の比較やアンケート調査項目との相関の解析などを進めている。その結果、3県全体で農閑期にあたる1-3月において本農薬種の主要な暴露経路が野菜の摂食であり、石川県において都市部と郊外部で有意な濃度差は検出されず農閑期において摂食以外の環境中からの暴露が小さいことが示唆された。 また第2回の検体収集として同様に国内3ヶ所から2019年8月-10月にかけて計109検体を収集しており、検体の分析および更なる分析結果の解析を進めている。将来的に行う予定の各種生体内物質への酸化ストレスに対応するバイオマーカーの分析のため、2019年11月には研究協力者であるNew York State Department of HealthのK. Kannan教授の研究室で技術指導を受け新規にバイオマーカー分析技術を習得した。
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Strategy for Future Research Activity |
【継続したアンケート調査との相関解析および他時期での検体収集】 現在本研究は3ヵ年計画の1年目が完了した状況であり、アンケート調査の質問内容(直近3日間の食事内容)と尿中濃度との相関解析は途中であることから、今後も継続して解析を行っていく。本報告で解析した尿検体は2019年1-3月に収集したものであるが、これはネオニコチノイド系農薬が頻用される稲作等の耕作期間における農閑期にあたり、経口摂取以外の環境から暴露の影響が比較的低いものと考えられる。そのため稲作等の農繁期にあたる5-9月頃での尿検体の収集を行う事が推奨される。既に2019年8-10月での2回目の尿検体収集は完了しているため、この検体の濃度分析も進めていく。当初は第3回の検体収集をネオニコチノイド系農薬が汎用される農繁期にあたる2020年6-7月に行う予定であったが、Covid-19の影響により検体収集が困難であるため、2021年度を目途に今後の状況を鑑みて農繁期での尿検体の再度の収集を行っていく予定である。 【酸化ストレスマーカーなどの指標を用いた健康影響評価】 過去の研究を参考に尿中濃度から主要なネオニコチノイド系農薬の推定1日摂取量を算出し、厚労省の定める環境基準値との比較を行い健康へのリスク評価を行う。これに加え、DNAへの酸化ストレスマーカーの代表的な指標である8-OHdG等の各種生体内物質への酸化ストレスに対応するバイオマーカーも並行して分析し、ネオニコチノイド系農薬および代謝産物の尿中濃度とこれらの健康指標バイオマーカーとの比較から神経毒性以外の広範な健康への影響を評価する。
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