2019 Fiscal Year Research-status Report
江戸期から帝国日本時代、土佐藩と台湾嘉義県を繋いでみえる保安林制度の公益性の特質
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19K20547
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
赤池 慎吾 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (50570199)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 禁伐林 / 保安林 / 土佐藩 / 台湾森林令 / 森林保護 / 環境保全 / 植民地 / 公益的機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
高知県及び台湾をフィールドにカウンターパートの協力を得て、文献調査と現地調査を実施した。 ①本年度は、研究計画に基づいて関連資料の発掘・複写収集を実施した。これまでに、国立公文書館つくば分館及び大日本山林会林業文献センター等に所蔵された土佐藩/高知県に関する林政史資料の収集を進め、延べ40点を超える資料の複写・リスト化を行った。『高知県統計書』(明治14年以降)等の二次資料を用いて、近代法制下の森林保全制度である禁伐林(明治11から29年)、保安林指定(明治30年以降)の量的把握を行った。 ②本年度は、計3回の台湾現地調査を実施した。国立台湾図書館及び国立台湾大学図書館等で清朝以来の台湾文献の調査・分析を行い、延べ30点の資料の複写・リスト化を行った。文献調査に当たっては、国立中興大学・劉教授及び国立台北大学・蔡教授に資料発掘・分析についてご指導をいただいた。『台湾之林野』(大正4年)等の二次資料を用いて、帝国日本時期における台湾保安林規則(明治34年制定)の展開過程を、地域別種類別に把握した。現在、保安林台帳等の一次資料との照合を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①台湾の森林学者や歴史学者に本研究の意義を理解していただき、現地調査及び文献調査における協力をいただくことができている。調査地として、台湾南部(台南市、高雄市、屏東県)を検討している。 ②林業経済学会において学会発表する機会を得、文献調査手法や、国際比較的視点を踏まえた林業史の再考など学際的分野からアドバイスを得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査結果及び台湾研究者との人的ネットワークに基づいて、現地調査と文献調査を進める。 ①国内調査では、3つの具体的視点から調査を行う。まず、一次資料・二次資料から明らかとなった土佐藩時代に造成・保全された「濱松留林」と「風潮除林」が、近代法制化の禁伐林(明治11から29年)、保安林指定(明治30年以降)に編入される経緯を地域史・漁業史と関連させて整理・分析する。次に、保安林指定後に新たに追加された「水源涵養林」や「魚付き林」等について、近隣住民の「公益」の認識を具体的な文言から明らかにする。具体的には、高知県室戸市、安田町、土佐清水市を予定している。そして3つめは、森林の空間的な利用に着目し、郷土資料や国有林関係資料から、保安林指定が近隣住民の利用慣行に及ぼした影響の一側面を検証する。 ②台湾調査については、コロナ感染予防の観点から、所属大学のガイドライン等を踏まえて慎重に検討する。渡航が可能であれば、計2回の現地調査を計画している。また国内で可能な調査方法として、所属機関に所蔵された台湾日日新報データベースを閲覧し、保安林に関するデータを収集する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染予防のため、2020年3月に予定していた国内及び台湾への現地調査を実施できなかった。2020年4月以降、所属大学のガイドラインを踏まえて、台湾調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)