2021 Fiscal Year Research-status Report
Holistic Appraisal of Environmental Change and Resilience of Tourism Resources in Mountainous Regions
Project/Area Number |
19K20567
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 山岳地域 / アルパインツーリズム / レジリアンス / 包括的分析 / ランドスケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症パンデミックの事情から、2021年度は調査の一部しか実施できなかった。主な原因は現場における諸制限、一部の当事者の不在や、対面 での調査の実施困難であった。このような事情にもかかわらず、北アルプスの一部の現場で調査を実施した。具体的に、上高地から槍沢上部、立山・剱岳およびアルペンルート周辺、水晶岳・薬師岳・黒部五郎岳周辺で調査を行い、現地調査の一環として、現場観察、山小屋関係者・登山者への聞き取りなどを実施した。これらの調査からそれぞれの地域の施設や観光インフラの現状や、コロナウイルスパンデミックを受けての登山形態の変化について理解を得ることができた。新型コロナウイルス感染症パンデミックを受けて、北アルプス一帯の山小屋は基本的に予約制度を導入し、、それに伴うサービスの向上を検討していることが確認できた。また、当事者の一部では、より安全な登山を重要視していることもわかった。しかしながら、自然界の変化が進む中、山岳地域の独自の自然環境の保護やその多様性への配慮が追いついていないことにも気付かされ、アルパイン・ツーリズムやその現場のレジリアンスにおいてまだ多くの課題が残されていることもわかった。特に山岳地域の動的自然の撹乱の重要性(例えば上高地における動的河川である梓川流路の自然的撹乱や景観の多様性など)に関して、観光サービス提供側は十分に理解しないまま、登山道の整備や観光取り組みは実施されているように見えたので、自然景観の多様性や動的自然の特徴からなるレジリアンス要素についてさらなる研究や情報啓発の余地があるように感じた。また、一部の登山道では整備が追いつかないなど、人手不足や作業の優先順位の問題も確認でき、社会的レジリアンスにおける課題も明らかになった。調査の成果を後日日本地理学会にて発表した。また現地調査の分析に基づいた論文を2件執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究が遅れた理由は新型コロナウイルス感染症パンデミック一連の制限、現場での当事者不足や、対面での調査が実施困難な状況である。なお、今後2022年度において残りの調査や分析を実施し、プロジェクトを完成させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度において、2021年度に実施しきれなかった現地調査や分析を行い、プロジェクトを完成させる予定である。具体的には、山岳地域の動的自然の代表として上高地一帯(槍ヶ岳・奥穂高岳周辺を含む)、高山地帯の環境の例として雲ノ平・奥黒部地域および白馬岳周辺にて調査を実施する。なお2022年度においてもアンケート調査の実施が困難になる見込みであるためなるべく山小屋関係者や登山者など当事者への聞き取りを増やし、参与観察や現場の撮影などの方法も持ち合わせることでデータを収集する。2022年度夏期において、一部の山小屋でプロジェクトから見えた課題や成果を踏まえた勉強会・情報交換会を実施する。また2022年度後半において、それぞれの地域からのデータを比較し、総合分析を行う。最終的に、研究プロジェクトの成果を学術論文2件や学術大会にて発表するほか、当事者に共有することを予定している。
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Causes of Carryover |
2021年度において、新型コロナウイルス感染症パンデミックによる諸事情のため一部の調査しかできず、次年度使用額が生じた。そのため、2022年度において、上高地一帯、雲ノ平・奥黒部地域、および白馬岳周辺で複数回の調査を実施する。現地調査では各地域を横断し、山小屋に滞在することで当該地域の取材を行う。調査の一環として山小屋関係者、登山者、国立公園管理者などの当事者への聞き取り、登山道沿いの参与観察や、現場の撮影などを繰り返す予定である。このようにしてそれぞれの地域における事情を把握し、北アルプスといった山岳地域全体についても総合分析のデータを収集する。また分析の段階では必要に応じて航空写真を購入し、空間の分析を進めることを想定している。上記のような調査項目を実施し、2022年度に予算を執行しプロジェクトを完成させる。
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Research Products
(4 results)