2020 Fiscal Year Research-status Report
Organizational Management Strategy and Social Network Formation in Women's Movement Led by Mumeo Oku
Project/Area Number |
19K20583
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
濱 貴子 富山県立大学, 工学部, 講師 (10711616)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 奥むめお / 婦人運動 / 消費者運動 / 組織マネジメント / 社会的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,奥むめおを中心とした婦人運動・消費者運動の成長と持続を支えた組織マネジメント戦略と社会的ネットワーク形成を長期的かつ質的・量的に明らかにすることである.現代の「男女共同参画」の課題と対策を論じるうえで不可欠な先行事例を見出し,現代日本女性のエンパワーメントに資する研究を目指している. 本年度は,昨年度から引き続き,奥むめおを中心とした婦人運動・消費者運動における組織マネジメント戦略の解明に取り組んだ.主婦連合会機関紙『主婦連たより』(1~478号)を通読し,各年度の総会報告から主婦連合会の運動方針,組織構成と役職に就いたメンバーについてデータ化を完了させた.また,毎月の「運動日誌」についてもデータ化を行った.活動の特色や活動資金捻出と活動拠点の創出・拡張,それらに対する会員の声についても『主婦連たより』や周年記念誌などからデータを収集した. 奥は,戦前における職業婦人社の運営や消費組合活動,婦人セツルメント・働く婦人の家の建設と運営などで培った方法を,戦後,主婦連合会の運営にも発展的に活かしつつ,「一人一博士」をめざす「部会活動」を軸に消費者運動を展開していった.また,自身や役員を継続的に国会や地方議会,政府や自治体の審議会に進出させることによって,部会活動によって得られた知見を政策に反映させるルートを開拓していった.多くの男性からの支援を調達しながらも,部会活動によって「賢い主婦」を育成するとともに活動資金や拠点を自前で捻出・建設し,あくまで「主婦」を運動の主人公とすることよって,「主婦が声を上げれば生活はよくなる」ことをメンバーに実感させ,行為主体性を育むことで運動を成長・持続させていった. 以上の知見をまとめ「奥むめおの婦人運動における組織マネジメント戦略――「才媛」の歴史社会学へ向けて――」のタイトルのもと,学会発表ならびに論文投稿の準備を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,課題に計画的に取り組み,奥むめおを中心とした婦人運動・消費者運動における組織マネジメント戦略の解明に関する資料のデータ化を順調に進めることができた.また,データ化作業のなかで論文の問題設定や構成を明確化することができた. ただし,国立女性教育会館所蔵の「奥むめおコレクション」については,コロナ禍において出張が難しかったこともあり,資料整理が昨年度から進められていないため,状況をみてあらためて資料調査に赴き,資料整理の作業を再開させたい. また,当初の研究計画では,今年度より奥むめおを中心とした婦人運動・消費者運動における社会的ネットワークの解明に本格的に取り組み始める予定であったが,今年度は『主婦連たより』の関連記事収集にとどまっている.データ化作業をすみやかに進めたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず,これまでに明らかにした「奥むめおを中心とした婦人運動・消費者運動における組織マネジメント戦略」に関する知見を学会において発表するとともに,論文の投稿を行う.くわえて,「奥むめおコレクション」に収められている各運動組織の規約に関する資料の調査も再開し,組織マネジメント戦略についてこれまで明らかにした知見に加えたい. 次に,研究計画において当初予定していた2020年度以降の課題に本格的に取り組む.2021年度は,奥むめおを中心とした婦人運動・消費者運動における社会的ネットワークの解明に取り組む.まず,日常的活動におけるネットワーク形成を明らかにするため,機関誌(紙)の活動報告から,会員数,投稿欄への会員原稿の掲載,特定の活動への支援団体・個人会員の参加状況についてデータ化し,人数・掲載回数・掲載期間の面から質的・量的分析を行う.続いて,言論活動におけるネットワーク形成を明らかにするため,機関誌(紙)の投稿者を除いた記事執筆者をデータ化し,人数・掲載回数・掲載期間の面から質的・量的分析を行う.また,連携的活動におけるネットワーク形成を明らかにするため,機関誌(紙)の活動報告から他団体との連携についてデータ化し,団体数・連携回数・連携期間の面から分析を行う. 以上の分析から得られた知見をまとめ,学会発表を行うとともに,論文として投稿することを目指す.
|
Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍により、資料調査のために出張することが難しく、また学会もオンライン開催となったため、それらにかかる旅費を使用しなかった。また、データ入力もデータのまとめ方を模索しながら自身で行ったため、人件費・謝金等についても使用しなかった。資料調査のために出張しなかったために、調査機関での資料コピー代等も使用しなかったため、その他経費についても使用しなかった。 次年度使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、「婦人運動・消費者運動関連図書」を引き続き物品費として購入するとともに、国立女性教育会館所蔵の「奥むめおコレクション」の資料調査のための出張旅費として使用する。また、調査機関での資料コピー代としてその他経費を使用する。
|
Research Products
(3 results)