2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of epigenetic mutations in hydrogel-induced cancer stem cells
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19K20654
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴鹿 淳 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (90823328)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / エピジェネティクス / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞は正常幹細胞と同様に自己複製能、多分化能を有し、さらには薬剤耐性を持つことから、癌の再発の原因となることから、治療標的として着目されているが、癌幹細胞は癌組織中に極めて少数しか存在しないため、その性状解析には効率的な誘導法の開発が求められる。我々は、生体適合性を有する数種類の高機能ハイドロゲルを用いて癌細胞株を培養すると、24時間以内に幹細胞の性質に関与する遺伝子の発現を亢進することや、脳腫瘍細胞株においては、長期間特定のハイドロゲル上で培養することにより、不可逆的な幹細胞関連遺伝子の発現の獲得や、マウス生体内での著明な腫瘍形成能の亢進を見出している。本研究では、高機能ハイドロゲルからの刺激により癌幹細胞が不可逆的に誘導される現象を、後天的な刺激により遺伝子発現に影響を及ぼすエピジェネティックな変化に着目して解析し、エピジェネティクスを介した癌幹細胞発生機序を明らかにすることが目的である。 当該年度は、先行研究でマウス生体内での腫瘍形成能の亢進を認めた脳腫瘍細胞株KMG4を3種類の高機能ハイドロゲル上で培養し、検討を進めた。ハイドロゲル上で培養したKMG4細胞では、ヒストンH3K9修飾酵素の遺伝子発現亢進を認め、Western blottingによってH3K9の修飾が亢進しており、少量の細胞数を用いたクロマチン免疫沈降法においてもH3K9の修飾が幹細胞性遺伝子の誘導に関与することが示唆された。DNAメチル化酵素阻害剤5-Aza-dCおよびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤Trichostatin Aを用いた検討では、各種阻害剤を投与したKMG4細胞において幹細胞関連遺伝子Nanog、Oct3/4の発現亢進を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DNAメチル化に関する解析については、阻害剤を用いたDNAメチル化と幹細胞性誘導との関連性における解析は順調に進んだものの、高機能ハイドロゲル上でDNAメチル化により制御される分子の解析がやや遅れている。 ヒストン修飾に関する解析については、Western blottingを用いたヒストン修飾解析は順調に進んだものの、クロマチン免疫沈降法の条件設定の変更に時間を費やしたことから、幹細胞関連遺伝子と特定のヒストン修飾の直接的な関与についての検討がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAメチル化に関する解析については、メチル化特異的PCRやメチル化解析アレイにより、幹細胞性誘導に関与することが報告されている分子の中で、高機能ハイドロゲル上でDNAメチル化により制御される分子の同定、ヒストン修飾については、関与が示唆されたH3K9の修飾に特に着目し、条件設定が完了したクロマチン免疫沈降法により、幹細胞関連分子の発現誘導にH3K9が直接的に作用するか、もしくは他の分子の発現を制御することにより間接的に作用するかどうかを検討する予定である。また、遺伝子発現制御にはクロマチンの立体構造が寄与することが明らかになっているため、遺伝子の転写活性化が活発に行われているオープンクロマチン部位に着目したATAC-seqを用いることも検討している。 上記の解析結果をもとに、高機能ハイドロゲル上で幹細胞性の不可逆的な誘導・維持に真に関与する分子を同定し、マウスxenograftを用いた検討に進みたいと考えている。
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Research Products
(11 results)