2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァティカン図書館所蔵ビザンティン詩篇写本の図像生成
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18H05554
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
辻 絵理子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (40727781)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ビザンティン美術 / 写本挿絵 / 詩篇 / 西洋中世美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヴァティカン図書館所蔵ギリシア語写本1927 番(以下「1927 番」)は、旧約聖書の『詩篇』を本文とし、テキストの間に100 以上の豪華な図像を有する12 世紀前半に制作された写本である。ビザンティン世界の詩篇写本には、旧約聖書である本文に対し、新約聖書や他の典拠に基づく挿絵を描く複雑な機能を持つ作例があるが、1927 番もまた、他に類例のない多様な挿絵を持っている。本研究は、1927 番に描かれた、詩篇著者とされる旧約の王ダヴィデが登場する箇所、及び新約聖書の物語図像を中心に、他に類例のない同写本の全体像を明らかにする試みである。初年度はまず1927番の概説、およびこれまで指摘されてこなかった同写本の図像選択における特徴を指摘する論文を執筆し、鹿島美術研究に発表した。具体的には、先行研究において根拠もなく「予型論的解釈がされていない」とされていた同写本において、明らかに予型論的解釈に基づいて図像が選択、配置された箇所を発見し、指摘した。旧約聖書に登場するアブサロムと、イスカリオテのユダが対応している箇所である。これをもって1927番の有する図像群に対し、新しいアプローチを示した。11月にはローマ、およびヴァティカンにおける現地調査を行い、2018年末には研究成果公開促進費を受けてビザンティン余白詩篇写本についての研究をまとめた単行本を出版した。同書は前年度の申請に基づき刊行が決定したが、入稿作業は年内であったため、初稿の段階で本研究の成果も多少ではあるが追加することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スタート支援は年度の後半から交付が決定し、予算の執行が可能になるため、現地における調査は夏期休暇を使えず短期間しか行えなかったものの、年度内の論文の執筆、及び本研究計画の成果も反映させた単行本出版が叶い、おおむね順調に進展していると言えるだろう。 また、出版は次年度になってしまうが、現在も同計画に関する論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の二年目は、引き続き資料の収集と分析、ならびにヴァティカン図書館写本室をはじめとする現地における調査を行う。 1927番特有の図像選択の理由を明らかにするために、ストックホルム大学のクロスティーニ教授らの神学研究の進捗を窺いつつ、基本的にはキリスト伝挿絵を中心に、本文との関係の分析を続ける。図像の数が多く、また類例のないものがほとんどであるため、本研究計画においては写本全体の図像の分類を中心とするが、具体的に関係性を指摘できるものについては、論文としてまとめていく。
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