2018 Fiscal Year Annual Research Report
地域構造の変化と民俗芸能の継承に関する民俗学的研究
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18H05635
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 薫 筑波大学, 人文社会系, 博士特別研究員 (90824350)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 俄 / 民俗芸能 / 地域社会 / 継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、俄(にわか)という民俗芸能を対象とし、少子高齢化や過疎化の影響によって民俗芸能の担い手医が減少しているという現代的状況において、民俗芸能がいかに継承されているのかを動態的に明らかにするものである。本研究は、具体的に民俗芸能を支える演者や担い手、コミュニティに焦点をあて、参与観察によって収集した一次資料をもとに民俗学的な手法から分析する。これによって、文化財の資源化といった政策的な議論では捨象されてしまう、民俗芸能の上演における多様な立場性の人々の関係性や、継承過程の不安定さについても描き出す。 上記の目的を達成するため、本研究では過去の調査資料を活用し、すでに俄の調査研究に着手している3地域(熊本県高森町、長崎県新上五島町、岐阜県美濃市)を調査地とした。俄は、10分程度の滑稽芝居で、世相風刺や機知に富んだ笑いの表現を盛り込むという特徴がある。俄は毎年演目が作られ、一夜限りの演技であることを特徴とするため、常に新たな演技が作られるという特性をもつ。民俗芸能が継承される社会的プロセスを動態的に理解しようとする本研究にとって、このように創造的で即興的な側面をもつ俄は、適切な研究対象であると考えた。 本年度は、いずれの地域もすでに祭礼が終了しているため、祭礼関係者へのインタビューや現地の図書館等での資料収集を中心に実施した。具体的には、民俗芸能の継承の現場において、いかなる工夫がみられるのか、個人がライフコースの選択を迫られるなかでどのように民俗芸能の担い手として関わるのか、民俗芸能の担い手がいかに獲得されているのかといった点に注目して、現地調査を行った。 本研究の成果の一部として、民俗芸能学会年次大会において個人発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定通り、熊本県高森町および長崎県新上五島町において、俄の継承実践に関する現地調査を行うことができた。その調査の過程で、2つの大きな出来事を観察した。1つは、熊本県高森町の俄が「高森のにわか」として国選択の無形民俗文化財に選ばれたことである。もう1つは、長崎県新上五島町の俄が、九州地区民俗芸能大会に初めて出場したことである。こうした動きが、当該地域の俄の伝承にいかなる影響を与えるのか、次年度以降も継続して観察していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、前年度から継続して当該地域において現地調査を実施する予定である。くわえて、現地調査によって得られた事例の整理・分析の遂行と公表に向けた準備を進めていきたい。
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