2018 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀イギリス自由教育論争におけるT. H. ハクスリーの教養概念に関する研究
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18H05798
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Senri Kinran University |
Principal Investigator |
本宮 裕示郎 千里金蘭大学, 生活科学部, 助教 (30823116)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 教養概念 / T. H. ハクスリー / M. アーノルド / 自由教育論争 / リベラル・エデュケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀イギリスで生じた自由教育論争に関する文献を読み進めるうちに、T. H. ハクスリーとM. アーノルドは、初等教育から高等教育に至る学校教育全般の改革を見据えている点、他の論者と比べて教育現場により近い位置からカリキュラム・レベルでの教育改革論を展開しているという2点において、自由教育論争のなかでそれぞれ特異な位置づけにあることが明らかになってきた。そこで、従来の計画では、真・善・美と実用性の止揚という観点からハクスリーの教養概念中心に検討を試みる予定であったが、昨年度の研究成果を踏まえて、今年度は、ハクスリーの論争相手であるアーノルドにまで視野を広げ、両者の比較を軸に、19世紀イギリスにおける教養概念の意義を探ることを目的とする。まずは、教養(もしくは文化)概念に関するR. ウィリアムズやS. ロスブラットらの研究成果に学びつつ、真・善・美と実用性の止揚という観点に着目して、J. S. ミルやJ. H. ニューマン、H. シジウィックといった自由教育論争の他の著名な論者が説く教養概念とハクスリー、アーノルドのそれぞれが説く教養概念の異同を整理する。次いで、ハクスリー・アーノルド論争からおよそ100年後に起こり、論争の再来と言われたスノウ・リーヴィス論争とハクスリー・アーノルド論争の比較を通じて、科学と文学それぞれの意義、さらには、学校教育での教科編成や教育内容といったカリキュラム・レベルでの議論についての検討を行う。これらの検討を通じて、ハクスリーとアーノルドが説いた教養概念の意義、ひいては、19世紀イギリスの教養概念の意義を共時的・通時的の両側面から明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の成果にもとづいて、研究の方向性を若干修正した。具体的には、T. H. ハクスリーのみを主な研究対象とする予定であったが、論争相手であるM. アーノルドも研究対象に含める修正を行った。アーノルドに関する資料については、すでに収集を概ね完了しており、検討も始めているものの、こうした理由から区分を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗が若干遅れているため、遅れを取り戻すべく研究に取り組んでいる。今年度は3本の論文(『京都大学大学院教育学研究科紀要』『千里金蘭大学紀要』『カリキュラム研究』を投稿することを目標に掲げ、必要に応じて、研究の方向性や質を確認するためにも学会発表を積極的に行う予定である。
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