2019 Fiscal Year Research-status Report
Theory of spin-wave-induced electric polarization in magnetic insulators
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19K21040
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山本 慧 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 任期付研究員 (10746811)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁性体 / スピン波 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、磁性絶縁体中における磁気の波(スピン波)と誘電分極の相互変換機構の開拓に向けて、代表者は空間反転対称性(鏡に映した際に元の姿とぴったり重なる性質)を持たない様に加工した磁石におけるスピン波の伝搬性質を調べた。
まず昨年度遅れていた、空間反転対称性が破れたような柱状欠陥を中央に設けた強磁性体細線における数値シミュレーションを大規模に行った。細線の片方の端で立てたスピン波が欠陥によって散乱されたのち反対側の端に到達する様子を計算し、右から左に伝搬する場合と左から右に伝搬する場合にどの程度違いが生じるかを調べた。その結果予想していたよりもはるかに小さい差しか生じないことが明らかになった。左右伝搬の差は欠陥の形にも強く依存しており、三角形状の欠陥がくさび状のものより効果が大きいことがわかった。この結果と対応して、研究協力者によって行われていた検証実験でも同じような傾向が見られ、現段階では信号がノイズと比較して有意でないため左右伝搬の差が実際に生じていることは結論できなかった。
一方、細線全体に周期的に反転対称性を破る加工をした場合のスピン波の性質を解析的計算によっても調べた。この場合明確に右に伝搬する波と左に伝搬する波が異なる周波数を持つことがわかった。細線の一部にだけ欠陥を入れた場合と周期的に加工した場合でなぜ大きく異なるかはまだよくわかっていない。一部に欠陥がある場合の散乱問題を解析的に扱う方法をKaiserslautern大学でKostylev教授を訪ねた際に直接教授することができた。この方法を用いて今後空間反転対称性が破れた場合のスピン波散乱問題の計算を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した数値計算、解析計算は大部分遂行できた。実験に携わる研究協力者との打ち合わせはコロナウイルスの影響により一部実行できなかったが、実験結果が装置の不具合や測定精度の問題で遅れており、何れにしてももう少し時間を要することになった。計算の結果は一部予期していたものと異なりさらなる調査が必要であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
数値シミュレーションについては、実験の方の進捗を待ちつつ、どのようなパターン加工を施せば左右伝搬の非対称性を増大できるかをさらに掘り下げる必要がある。その指針として、本計画にかかる打ち合わせの過程で学んだスピン波散乱理論の解析的取り扱いを反転対称性が破れた系に応用していく。散乱理論と、周期的な加工がある場合の解析計算との比較も今後の課題である。
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Causes of Carryover |
R1年度に予定していた、東北大学所属の研究協力者と本事業に係る打合せが研究の進捗及び研究協力者の業務状況が原因で実施できなかったこと及びロンドン大学所属の研究協力者との本事業に係る打合せもコロナウィルスの影響が原因で実施できなかったことから次年度使用額が生じた。次年度使用額は計画の見直しによりR2年度に延期したこれらの打合せに係る費用として使用する。
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Research Products
(5 results)