2020 Fiscal Year Research-status Report
Theory of spin-wave-induced electric polarization in magnetic insulators
Project/Area Number |
19K21040
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山本 慧 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究員 (10746811)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 磁性体 / スピン波 / 表面音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、空間反転対称性の破れた微細構造におけるスピン波と誘電分極の相互作用及びそこから生じる非相反性(波が一方向にのみ伝播する性質)をスピン波散乱理論の観点から調べていく予定であったが、コロナ禍の影響でロンドン大学の研究協力者による検証実験が進まず理論の比較対象となるデータが十分に得られなかった。そこで密接に関連した問題である、材料界面における空間反転対称性の破れがスピン波と電気分極自由度を担う格子の運動である音波の結合に及ぼす影響とそこから生じる非相反性を調べる方向に研究内容を修正した。 まず理化学研究所の実験グループと共同で、圧電物質(電圧によって歪み変形を生じる物質)の表面を伝播する音波が、表面に蒸着した磁石を通過する際に非相反性が現れることを実験・理論の両面で明らかにした。この現象は、物質表面における空間反転対称性の破れによってスピン波と音波の間の相互作用が非相反になっていることから生じる。理論計算によってこの非相反性は適当な条件下では非常に強くなり、事実上音波が一方通行となるような状況を作ることができることを示すことに成功した。 次に同研究を発展させて、磁性体にスピン波を励起した場合に、スピン波との相互作用から生じる音波がやはり一方向にのみ発生することがあり得ることを理論的に予言した。ここで必要とされるのはやはり界面における空間反転対称性の破れのみであり、適当な条件を揃えればどのような磁性体でも原理的には音波に非相反性を付与できることを示した。 これらの研究成果はアイソレータなどマイクロ波制御技術や、環境発電における熱流の制御等に応用できる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画であったスピン波と誘電分極の相互作用については期待した成果が得られなかったが、密接に関連した課題であるスピン波と音波の相互作用について非相反性が生じるメカニズムを明らかにし、その実証実験につなげることに成功した。これによって絶縁体中のスピン波と電気分極自由度の間の相互作用とそこにおける空間反転対称性の役割に関する理解が深まり、マイクロ波制御や環境発電への応用可能性を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在理化学研究所のグループと共同で、スピン波と音波の結合が非線形領域に入った場合のそれぞれの波動の伝搬特性を調査中である。また同様の非線型結合現象をスピン波とマイクロ波空洞共振との結合においても、入力パワーによって結合の大きさを制御できる可能性を研究していく予定である。関連して、スピン波と誘電分極の結合を断熱近似を使った非線形応答理論として定式化する可能性を検討している。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍によって予定していた出張を行うことができなかったため残額が生じた。スピン波と電気分極を担う格子自由度の相互作用に関する検証実験のための打ち合わせを行う出張を、次年度に行うことで残額を使用する計画である。
|
Research Products
(7 results)