2018 Fiscal Year Annual Research Report
新たな細胞死necroptosisによる治療抵抗性膵癌微小環境改変と治療への応用
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18H06165
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小薗 真吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40706850)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 膵臓癌 / apoptosis耐性 / necroptosis / 微小環境 / CXCL5 / CXCR2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は apoptosis 耐性の膵癌に対して、一部でシグナル経路を共有しているnecroptosisを誘導し、さらに necroptosisを来した癌細胞から放出される内因性分子による微小環境改変作用を応用し、治療抵抗性を克服する新規治療法を開発することである。 本年度はヒト膵癌切除標本を用いた免疫染色において、膵癌細胞においてnecroptosisの実行に必要なRIP3やMLKLが発現していることを確認した。また、複数のヒト膵癌細胞株、KPCマウス由来の膵癌細胞を用いた実験で、RIP3とMLKLを同時に高発現している膵癌細胞においてのみ薬剤によるnecroptosisの誘導が可能であり、それらの細胞ではTNFとカスパーゼ阻害薬などを組み合わせたapoptosisの誘導には不応性であることが分かった。Apoptosisを来した膵癌細胞の上清を癌細胞に添加しても遊走・浸潤能に影響を与えなかったが、necroptosisを来した膵癌細胞の上清を癌細胞に添加すると遊走・浸潤能の亢進を認めた。また、それぞれの死細胞上清を膵星細胞に添加したところ、apoptosis上清は膵星細胞の遊走能を亢進させたのに対して、necroptosis上清は影響を与えなかった。 抗体アレイを用いた解析から、necroptosisを起こした膵癌細胞の上清内において、特異的にMacrophage Inflammatory Protein-3 (MIP3A)やC-X-C motif chemokine 5 (CXCL5)の発現が上昇していることが分かり、CXCL5のレセプターであるC-X-C chemokine receptor type 2(CXCR2)を阻害薬SB225002で阻害するとnecroptosisの上清によって亢進していた膵癌細胞の遊走・浸潤能に対して阻害効果が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトの膵癌細胞におけるnecroptosis関連タンパクの発現解析によって膵癌がnecroptosis実行のポテンシャルを有していることが確認でき、さらに細胞株を用いた実験からRIP3, MLKL高発現の膵癌細胞においては薬剤誘導性のapoptosisに不応性でありながら、necroptosis誘導が可能であることが確認できた。 またnecroptosisが微小環境中に、CXCL5やMIP-3αを放出している可能性について確認し、癌細胞への直接作用ではあるが、CXCL5が遊走能・浸潤能の亢進に影響を与えている可能性が示された。 以上からおおむね計画通りに実験は進んでおり、②の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
necroptosis上清、あるいは特定された因子が微小環境へ与える影響について詳細に検討していく。具体的には膵自然発癌マウスモデルへの薬剤投与によるnecroptosis誘導と免疫細胞やその他間質細胞などの各種免疫染色による病理組織学的解析、in vitroにおけるマクロファージなどマウス由来細胞との共培養実験、発現・形質変化の解析などを行っていく。
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