2021 Fiscal Year Research-status Report
Spontaneous ideological escalation without leaders as a distributed socio-dynamical process
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19K21571
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐山 弘樹 早稲田大学, 商学学術院, 教授(任期付) (30345425)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 意見の極端化 / 社会ネットワーク / 情報通信技術 / 数理モデル化 / 機械学習 / データサイエンス / 複雑系 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,理論モデルの挙動を大規模計算機実験を通じてより詳細に解析し,またこれまでに収集した実社会データ(ビンガムトン大学による集団意思決定実験データ,およびソーシャルメディア上での意見の極端化過程のデータ)を,機械学習とネットワーク解析を用いて詳細に分析した.また,そこから得られた研究成果について精力的に出版・発表を行った(英文論文1,和文論文1,基調講演1,招待講演2,口頭発表3,ポスター発表2).
理論モデルの解析については,大規模計算機実験の結果をニューラルネットワークを用いてモデル化・可視化した.その結果,社会分断の相転移面が,これまでに分かっていた「同種親和性」と「新奇性志向」という2つの行動原理の間のみにあるのではなく,「同種親和性」と「同調性」の間にも存在することが明らかとなった.同種親和性と同調性は互いに非常に似通った行動原理であり経験的に混同されることも多いが,そのどちらが優位であるかが社会全体の構造の進化に多大な影響を及ぼす,という本研究の知見は,非常にユニークで有意義である.
実社会データの解析については,各ソースから得られた自然言語による情報(意見)を機械学習における意味論的埋め込み手法を用いてベクトル化し,それらの間の距離を用いて意見の奇抜性(eccentricity;受信者がその時点で持っている意見群の平均値からの距離)を特徴づけた.その結果,奇抜性が高い意見ほど他者からの関心を得やすい傾向があること,社会的近傍同士では意見が同質化しやすいこと,また個々人の意見は時間的に大きくドリフトするが近傍での意見同質化のせいで自身のドリフトを自覚することが困難なこと,がそれぞれ明らかとなった.これらの結果は,意見の極端化が自発的にかつ無自覚に進行する機構を示しており,たいへん重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数理モデルの解析,実データ収集と解析ともに,ほぼ順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度となるため,研究成果の公表活動に重点を置く.特に実社会ネットワークデータを用いて得られた結果を国際的なトップジャーナルに出版することを目標に,研究活動を推進する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの国際的蔓延のため,研究の進行と形態に変更が生じたのが主な理由である.翌年度に研究補助の雇用経費・論文の出版費用等に使用し,研究の推進と成果の公表を推進する予定である.
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