2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K21582
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
前川 洋一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10294670)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 寄生虫感染 / 炎症抑制 / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
健康寿命延伸のためには老化を緩徐にすることが望ましい。老化には炎症による細胞・組織のダメージとその修復が関連する。したがって、老化の緩徐化には過度の炎症を抑制する必要がある。一方、老化した細胞からは炎症性サイトカインが産生される(senescence-associated secretory phenotype, SASP)ことで炎症が誘導され、さらなる細胞の老化を引き起こす。SASPによる老化スパイラルを断ち切ることが老化を防止し健康寿命の延伸につながる。私たちは従来の慢性感染症研究から、病原体由来分子が炎症反応を抑制することを見出した。またこの炎症抑制作用に関連する宿主受容体候補分子も見出している。これらの知見をもとにして、病原体由来分子-宿主受容体軸が過度の炎症を抑制し、細胞老化・個体老化を防ぐことができるのではないかとの着想を得た。私たちが見出した宿主受容体候補分子はこれまでのところ機能はほぼ不明であり抗炎症反応に関係するとの報告はない。また、病原体由来分子が炎症を抑制する詳細な分子基盤も依然不明である。しかし、病原体由来炎症抑制分子は宿主との長い生存競争を勝ち抜いた病原体が獲得したものであり、宿主の炎症を抑制するが宿主には過大なダメージを与えないという特性を持っている。この特性を損なわないようにかつ炎症抑制作用を最大限に発揮させる様な創薬(宿主受容体の低分子アゴニストやアゴニスト抗体など)が可能になれば、炎症を適切かつ安全にコントロールすることができ、結果としてSASPによる老化スパイラルを断つことができると考えている。そこで本研究では、病原体由来分子による炎症抑制の分子基盤を明らかにし、その成果に基づく抗老化の新たな予防概念の創出と創薬シーズの探索を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
寄生虫が産出する炎症抑制分子の宿主側標的分子(受容体)の最終確認が難航しており、遺伝子改変マウスの作成に着手できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、寄生虫由来炎症抑制分子の標的を細胞レベルで同定する作業を行なっている。この際、哺乳動物細胞に対しCRISPR/Cas法を用いて遺伝子の発現欠損株の作出により検証することを行なっている。哺乳動物細胞への遺伝子改変効率が高くなく、検証に手間取っているため、現在とは異なる手法による遺伝子改変法を模索中である。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウス作製の予算を計上していたが、研究が計画通り進んでいないため当該予算を次年度に使用することとなった。2020年度は繰り越した当該予算を遺伝子改変マウス作製に充当する計画である。
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Research Products
(3 results)