2022 Fiscal Year Research-status Report
The Processes and the Achievements in Literary and Cultural Productions by Arab, Muslim and Palestinian Diasporas in the U.S. Urban East Coast
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19K21639
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
有馬 弥子 恵泉女学園大学, 人文学部, 教授 (70212652)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | パレスチナ / パレスチナ系アメリカ文学 / アラブ系アメリカ文学 / イスラーム / ムスリム系アメリカ文学 / アヤド・アクタール / ベティー・シャミー / モナ・マンスール |
Outline of Annual Research Achievements |
小泉著『アメリカに響くパレスチナの声』は本課題関連の数少ない先行研究である。本著はパレスチナ系ディアスポラの詩人ナイとダルウィーシュを論じている。アラブ世界では宗教上コーランが文化的基盤を成しているため詩吟と詩の伝統があり、詩作はアラブ系米文学における中心的な文芸活動である。 しかし小説作品や演劇作品も一定数創出され続けており本課題で取り上げてきた。それらに関し日本での唯一の先行研究として竹島と平川によるアクタール『ディスグレイスド』論が挙げられるが、本課題はアクタール作品研究を始点としつつ、米文学界、米演劇界で高く評価されるアクタールがアラブ系、ムスリム系文芸活動の文脈ではいかに位置付けられるかを追ってきた。その結果、アメリカ現代演劇、特に東海岸都市部の演劇活動においては、アラブ系、ムスリム系、パレスチナ系ディアスポラによる活動が確実に脈づいているという確証を得た。これを受け2022年度は英米最新演劇作品を取り上げ続けている現代演劇研究会での研究活動に専念し、アクタール作品を始めとした本研究課題対象作品群をアメリカ現代演劇の潮流の中でいかに位置付けるべきかを問い続けた。 『現代演劇』23号発刊に向けて編集会議と校正作業が続いた。9劇作についての論文の校正を担当。 本号では20号まで設けられていた「海外演劇事情」を復活させることが現代表より提案され、アメリカ演劇事情についての記事を担当。本研究課題対象作品群を総括的に取り上げ、「同時多発テロ後のアメリカ演劇――アメリカ的モザイクの一片としてのイスラム、アラブのテーマ」、「『恥辱』後のアクタール演劇上演」、「ヴィレッジに点滅するムスリム、アラブ、パレスチナの語り」、「『カム・フロム・アウェイ』――ブロードウェイにみるもう一つの同時多発テロ後」、「同時多発テロ後の実相と演劇界におけるアメリカ的モザイク」の5節を執筆し提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『現代演劇』23号の編集作業に本格的に関わる運びとなり、現代演劇研究会のこれまでの歴史と『現代演劇』シリーズの編集方針の変遷を知り、本研究課題で取り上げてきた諸作品をアメリカ現代演劇の潮流及びアメリカ現代演劇研究の中でどのように位置付けるべきか検証する機会となった。 『現代演劇』23号で復活する「海外演劇事情」のアメリカ現代演劇に関する記事を執筆し提出したことは、本研究課題をアメリカ現代演劇の中でどのように位置付けることができるかを主張する機会となった。 2023年2月には多民族研究学会より2023年度12月大会でのシンポジウム登壇を依頼され承諾した。本研究課題をエスニック米文学の中でどのように位置付けるかを提示する機会となる。また、この発表に向けてはあえて他分野のエスニック・スタディーズと本研究課題が交わる領域について深めていきたい。多民族研究学会発足20周年記念シンポジウムは、このようなクロスエスニックな知見を交わらせ広め合う機会となろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は多民族研究学会12月の大会での発表準備に専念する。多民族研究学会では2023年度12月には学会発足20周年記念シンポジウムを「クロスエスニックセッション:エスニック文学の未来」と題して行う計画である。ここではアフリカン・アメリカン、ネイティブ・アメリカン、エイジアン・アメリカン、カリビアン、ジューイッシュ・アメリカンが取り上げられるが、中東系・ムスリム系(移民)の分野についての発表を担当する。各分野担当者がそれぞれに、その潮流、研究動向、また日本の大学でどのようにエスニック米文学・エスニック・スタディーズを教えているかについて発表する予定である。 ジューイッシュ・アメリカンとアラブ・アメリカンの交差として、アラブやパレスチナに理解を示す姿勢のためにジューイッシュのコミュニティーで糾弾されてきた劇作家トニー・クシュナーや学者フィンケルシュタインについて新たに研究を進め発表内で触れることを考えている。 現代演劇研究会で本研究課題に直接関わるテーマの作品がリストに挙がれば発表を担当する。
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Causes of Carryover |
海外出張がなかったため。最終年度に総括としての海外出張を考える。多民族研究学会20周年記念シンポジウム登壇に向けて、最新上演作品としてモナ・マンスール作The Vagrant Trilogyに関連する第二次資料の収集、購入を進める。その他の本研究課題に関連する第一次資料及び第二次資料の収集、購入を続ける。
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