2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of dating method and expansion of measurable historical data
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19K21654
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
小林 謙一 中央大学, 文学部, 教授 (80303296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 雄一郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (30456636)
箱崎 真隆 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (30634414)
遠部 慎 島根大学, 法文学部, 客員研究員 (50450151)
宮田 佳樹 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (70413896)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 年代測定 / 先史考古学 / 炭素14年代 / 年輪年代 / 酸素同位体比 / 貝輪成長線分析 / 脂質分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に年代決定の基本軸として、日本列島縄紋時代実年代体系の大枠を明らかにする必要があるが、炭素14年代測定法のみでは、測定対象とし得る資料に限りがあり、側結果についても誤差や試料の制約から限界が存在する。詳細な年代決定が期待できる酸素同位体比分析は、関東地方など特定の地方については基準試料が整っておらず、その1年単位で年代が決定できる特性を生かすことができない。そのため、年輪試料を探して縄紋時代に遡らせると ともに、中近世など年代が判明している考古試料に適用し、炭素14ウイグルマッチング可 能な年輪試料を年輪測定・酸素同位体比の測定と重ねて、高精度年代体系化を可能とする必要がある。そのための測定資料として、関東地方の縄紋遺跡および近世遺跡、東北地方の中世遺跡の木材試料を採取し、一部は測定した。 また、貝塚で多く産する貝殻の貝輪年代を整理し、炭素14年代・酸素同位体を重ねて新たな年代測定法を案出する目的のために、千葉県や愛知県の貝塚遺跡の貝殻資料について、貝輪成長線分析と炭素14年代測定をおこなった。 さらに、これまでに高精度年代体系化の目的で採取してきた試料の内、今回の研究目的に適した試料を検索し、以前の処理方法では測定できなかった微細な試料や処理が難しかった化殻・骨試料に対して、処理方法の工夫により測定例を増すことを検討し、愛媛県の古人骨などの測定を試みた。 11/11に東京大学総合博物館にて他の小林が代表を務める基盤B、国際共同研究推進と協同で研究メンバーが集まり、各分担者の中間報告及び今後の研究方針について打ち合わせた。 このような研究・測定の蓄積により、新たな測定対象試料の拡大に向けての道筋を探ることができた。初年度から測定報告や学会報告など、実質的な研究成果を上げることができ、2020年度以降の研究に大きく弾みをつけることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度において、年輪年代と炭素14年代の相互検証として千葉県多古田遺跡の縄文晩期丸木舟の年代を検討した(小林・箱﨑ほか『千葉県匝瑳市多古田低地遺跡―豊和 埋蔵文化財調査業務―』印旛郡市文化財センター)。東京都内の近世遺跡の木材を測定し、年代データを蓄積するとともに産地推定にも応用できることを示した(箱﨑・小林ほか『日本文化財科学会第36回大会研究発表』)。また、資料として山形県寒河江市慈恩寺関係の中世木材、東京都東村山市下宅部遺跡の縄文後晩期資料などを箱﨑分担者とともに採取し、今後測定に向けて準備している。また、貝殻の年代として千葉県船橋市上ホシ遺跡の資料を遠部分担者と共同で貝殻成長線と「炭素14年代を測定し、検証可能な結果を得た(遠部・小林ほか「上ホシ遺跡(1)調査地点の成長線分析とその年代」『千葉県船橋市上ホシ遺跡(1)』)。また、愛媛県上黒岩第2岩陰出土人骨の年代測定をおこない、共伴土器との対比を検討した(遠部・小林ほか「愛媛県上黒岩第2岩陰遺跡の調査」『日本考古学』50)。このほか、土器付着物の炭素14年代に影響を与える煮炊きの内容物の復元として、炭素13同位体比における検討をおこなった(小林謙一2020「縄紋時代中期土器付着物の同位体比の検討」『紀要 史学』第65号)。このほか、炭素14年代測定里の蓄積、そのデータベース化を進めている。初年度から、順調に成果を蓄積しており、さらに千葉県の貝塚などさらに資料の最終を進める予定を立てている。ただし、2019年度末にコロナウイルス拡散防止のための外出自粛が始まり、資料収集の計画が一端縮小しているため、全般的には進捗は万全とは言えないと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは2019年度に採取し、まだ測定していない試料の測定を進める。さらに、測定研究の過程で、土器付着物についても脂質などの分析を重ねることによって、海洋リザーバー効果に代表される測定結果への影響についての検討を深めることができる手がかりが得られたため、2020年度より宮田佳樹分担者を加え、さらなる分析の深化を目指すこととした。そのことによって、単なる年代測定のみならず、食性分析や生態復元へと繋がる可能性も示唆される。 さらに年代測定を含めた試料の拡大が必要であるとともに、測定法の相互の検証も必要である。そのために、様々な測定を同一遺跡の同一遺構出土試料に対して多角的におこなうことを計画する。候補としては、代表者が基盤Bの資金を用いて調査した三鷹市滝坂遺跡の試料や福島市和台遺跡の試料が複数の測定法を行う分析候補としてあげられるほか、貝塚や岩陰遺跡の試料を検討したい。
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Causes of Carryover |
2019年度2月以降に新型コロナウイルス拡散防止に係わる制限が徐々に見られるようになり、特に3月に予定した資料調査などの出張がとりやめになったため。2020年度に拡散防止に伴う緊急事態宣言が解除されれば、研究活動を再開し、延期した出張もおこなうことによって使用する予定である。
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[Book] 土器のはじまり2019
Author(s)
小林 謙一・工藤雄一郎・遠部慎ほか
Total Pages
186
Publisher
同成社
ISBN
ISBN978-4-88621-825-4
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