2019 Fiscal Year Research-status Report
負ミュオンスピン・インジェクションによる非磁性核における核スピン緩和測定法の実現
Project/Area Number |
19K21859
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
竹下 聡史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (40450366)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 負ミュオンスピン緩和法 / スピン緩和測定 / 分子運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、負ミュオンによるスピン緩和法を応用することにより、核スピンを持たない12C核において核スピン緩和測定を可能とする極めて画期的な手法(負ミュオンスピンインジェクション法)を実現するものである。さらに本手法応用し、ゴム弾性を示す高分子材料で重要であり、かつ他の測定手法では観測が容易ではないMHz帯における分子運動を同定する事を目的とする。 当該年度では、まず単純な化学構造を有する材料において本手法を適用し、MHz帯のスピン緩和測定が可能であることを示す計画である。これに基づき、単純な化学構造で構成されるポリブタジエンに対して本手法の適用を試みた。その結果、12C核に束縛された負ミュオンによるスピン緩和信号を観測する事に成功した。特に、100K程度に冷却した試料においては、負ミュオンが束縛された12Cに結合する水素原子の核スピンと負ミュオンスピンとが結合した事を示す特徴的な緩和信号(2スピン系緩和信号)が得られた。この結果は打ち込まれた負ミュオンが高分子鎖内の炭素原子に束縛されている事を明確に示しており、これまでに報告例がない極めて興味深いものである。また、これを室温に昇温すると、分子運動の活性化に起因すると考えられるスピン緩和率の減少を観測する事に成功した。しかし、後述の通りミュオン実験施設の運転再開の遅れにより詳細な実験を行うことができなかったため、観測されたスピン緩和信号と分子運動との詳細な関係を議論するに至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究における負ミュオンスピンインジェクション法は、ミュオン実験施設によって行われるものである。当初ポリブタジエンにおける詳細なスピン緩和測定を実施する予定であったが、当該施設の運転再開の遅れにより、これを実施できなかった。 また、上記結果を基に本手法のための試料測定環境を高度化する予定であったが、これも実施にするに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
施設運転再開の遅れにより影響を受けた実験は、2020年度に実施される予定である。また、これにより得られる結果を基に、試料測定環境の高度化を行う。
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Causes of Carryover |
施設運転再開の遅れにより、当初行うはずであった実験が延期され2019年度内に実施できなかった。また、この実験結果を基に試料測定環境を構築する予定であったが、これも進められない状況であり、次年度使用額が生じている。 延期された実験は2020年度前期に実施される予定である。また実験結果が得られれば、解析を行い、試料測定環境の構築に移ることができる。
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