2019 Fiscal Year Research-status Report
観測が不可能な流出量に対する時系列変数としてのバイアス補正手法の開発
Project/Area Number |
19K21992
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萬 和明 京都大学, 工学研究科, 講師 (90554212)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 分布型水循環モデル / 河川流量 / バイアス補正 / 流出量 |
Outline of Annual Research Achievements |
河川流量を算定する数値モデルとして,陸面過程モデルSiBUCと河道流追跡モデル1K-FRMからなる分布型水循環モデルを開発した.この分布型水循環モデルでは,陸面過程モデルが流出量を出力し,河道流追跡モデルへと入力され河川流量を算定できる.九州地方を対象領域に設定し,この分布型水循環モデルに気象データの観測値を入力として与えて得られた河川流量を観測の河川流量と比較したところ,分布型水循環モデルを用いることで河川流量を良い精度で再現できることが確認できた.したがって,分布型水循環モデルの中間生成物である流出量を観測値とみなしうる参照データと考えることができる.この参照データを用いて,観測値が存在しない流出量に対するバイアス補正が可能となる. 九州地方の2流域(大淀川・筑後川)を対象に,MRI-AGCM3.2Sが出力する流出量に対してバイアス補正を適用することにした.MRI-AGCM3.2Sが出力する流出量を用いて算定した河川流量は特に高水を過小評価しているため,バイアス補正が不可欠である.本研究課題では,クオンタイル・マッピング手法を流出量に適用し,その効果的な適用方法について分析を開始した.その結果,3時間単位の流出量に対して,3時間単位でバイアス補正する場合には過剰な補正となり良好な結果が得られないこと,1日単位でバイアス補正した方がよい補正結果が得られることがわかった.この原因として,MRI-AGCM3.2Sの流出量データにおいて,大出水直後の逓減期間に少量の流出が長時間続くという時系列的な特徴がある中で,参照とする流出量データの方が大きな出水の頻度が高いという,頻度分布の違いが一因であることがわかった.そのため,バイアス補正の対象とするデータの時間スケールを長めに設定する方が良い結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
河川流量を算定する数値モデルとして,陸面過程モデルSiBUCと河道流追跡モデル1K-FRMからなる分布型水循環モデルを開発した.この分布型水循環モデルは河川流量を良い精度で再現できることが確認できた.したがって,分布型水循環モデルの中間生成物である流出量を観測値とみなしうるバイアス補正の参照データと考えることができる. この参照データを活用して,すでに九州地方の2流域(大淀川・筑後川)を対象に,MRI-AGCM3.2Sの流出量に対してバイアス補正を適用した.具体的には,クオンタイル・マッピング手法を適用し,バイアス補正手法の効果的な適用方法について分析を開始した.その結果,3時間単位の流出量に対して,3時間単位でバイアス補正する場合には過剰な補正となり良好な結果が得られないこと,1日単位でバイアス補正した方がよい補正結果が得られることがわかった.この原因として,MRI-AGCM3.2Sの流出量データにおいて,大出水直後の逓減期間に少量の流出が長時間続くという時系列的な特徴がある中で,参照とする流出量データの方が大きな出水の頻度が高いという,頻度分布の違いが一因であることがわかった. 以上より,当初の計画通り,河川流量を良い精度で再現する分布型水循環モデルの開発が完了している.それに加えて,バイアス補正手法の効果的な適用方法について分析を開始し,3時間単位の流出量ではなく,1日単位の流出量に対してバイアス補正した方がよい補正結果が得られることがわかっている.その原因についても,バイアス補正の元データと参照データの流出量データで,時系列の特徴が異なることと頻度分布が異なることに起因するを明らかにした.すなわち,バイアス補正の対象とするデータの時間スケールを長めに設定する方が良い結果を得るとの知見がすでに得られており,当初の計画よりも進んだ成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
流出量に対するバイアス補正手法の効果的な適用方法についての分析結果より,3時間単位の流出量ではなく,1日単位の流出量に対してバイアス補正した方がよい補正結果が得られることがわかっている.その原因は,バイアス補正の元データと参照データの流出量データで,時系列の特徴が異なることと頻度分布が異なることに起因するがわかっている.すなわち,バイアス補正の対象とするデータの時間スケールを長めに設定する方が良い結果が得られている.では,どの程度長い時間スケールに設定するのが適切なのか,さらなる分析をすすめる計画である.また,補正対象を1日単位に設定するとした場合,日界で不連続になることが考えられるが,その河川流量の算定への影響についても分析していく計画である.
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Causes of Carryover |
本研究課題の第一目的に分布型水循環モデルの開発を挙げており,その開発のために並列計算機の購入を計画していた.他研究者と共同で利用している既存の計算機環境において,他研究者との調整の結果,計画当初は使用を想定していなかった計算機を使用することが可能となった.そのため,第一目的である分布型水循環モデルの開発を既存の計算機で遂行することができた.バイアス補正の適用と分析には並列計算機と大容量データサーバの購入が不可欠であり,データサーバの購入と京都大学の大型計算機の利用を計画している.
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