2019 Fiscal Year Research-status Report
Data-driven Active River Channel Control for Maintenance and Recovery of Stream Integrity
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19K22026
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
村松 正吾 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30295472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 浩保 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00399354)
早坂 圭司 新潟大学, 自然科学系, 研究教授 (40377966)
大竹 雄 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90598822)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | サイバー・フィジカル・システム / 流路変動 / 河道制御 / データ駆動 / 強化学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模な河川災害により人命と社会資産の損失が繰り返されている。発災時の避難経路の確保と発災後の早期復興のためにも交通網など重要インフラの被害を最小化したい。一方、現在の河道の多くは、土砂堆積により水流が偏心しやすく、樹木の繁茂と相まって不要な破堤や氾濫を誘因しかねない。そこで本研究では、流路健全性の保全と回復のための河道能動制御法を提案している。情報科学、河川工学、地盤工学、物理学の異分野融合研究体制で、河川災害予防のためのサイバー・フィジカル・システム(CPS)の創出を目指している。センサー群による情報収集、計算機によるシミュレーション、アクチュエータ群による能動的水制のプロトタイプ・システムを構築中である。 治水の最善策は氾濫の予防である。一方、現在の河道の多くは、横断面の形状が上に凸型となり洪水流が大きく偏心して危険な状態となること、同一の横断面内で標高差が大きくなるため豊富な地下水と相まって樹木が高密度に繁茂することが二大課題となっている。この流路の不健全な状態は不要な破堤や氾濫を誘因する。 健全な流路は、洪水流が流心で流れ、樹林がなく洪水の水位を上げない。本年度は、河川防災CPSのプロトタイプ構築を目指して、河川状態の計測法およびメカニズムの解析、データ駆動による河川状態の時間発展式の構築と同式を適用した流路変動推定法、流路を健全に維持する保全・回復のためのアクチュエータとその制御法について検討を進めた。屋内流水実験装置を利用し、CPSのプロトタイプ構築のための設備を整え、基礎的な検討事項について国内学会にて4件の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、主として流路変動の時間発展式のデータ駆動による導出に取り組んだ。また、自律的に生じる河川流路の偏心を抑えるために、河川の流路変動を観測し、その状態を推定し、アクチュエータで流路を制御するアルゴリズム開発とプロトタイプ・システム構築の準備も進めた。実験には既存の屋内流水実験装置および水表面と水底面の起伏を同時計測可能なストリームトモグラフィー(ST)を利用した。ST装置は、稼働台に設置されたシートレーザとカメラから構成される。 流路変動の数式モデルの構築には、データ駆動により高次元力学系の時間発展式を導出可能な動的モード分解(DMD)を採用した。また、水底面が不可視である状況も考慮に入れ、この時間発展式から流路変動の予測を試みた。拡縮流路を構成する水制構造物を実験模型に固定した場合と水制のない場合についてST装置によりデータを取得し、DMDの性能評価とその課題を整理した。この成果は、国内学会で資料を公開した(COVID-19のため発表は中止となった)。 さらに、流路の動的な制御のために機械学習の一種である強化学習の手法を取り入れることとし、流路の健全性の観測可能な指標を検討した。この強化学習に必要なGPGPU計算機と数値計算ソフトウェアを購入した。加えて、センサ群およびアクチュエータ群の構築に必要な機材も購入し、河川模型へ設置するための準備を進めた。2年目の計画を進めるための準備が整えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、実験条件を増やして多くのデータを取得し、データ駆動による時間発展式のさらなる洗練化を進める。加えて、河川模型を利用した実験室レベルでのCPSプロトタイプ実装を行う。便宜上、ロボットアームによる水制の配置制御やサーボモータによる水制の形状制御を実装し、流路の保全および回復の実験を実施する。 センサとしてカメラによる観測を想定する。また、本プロジェクトと並行して実河川の水表面起伏のレーダー計測実験も進めているため、この計測が将来実用化されることを想定し、ST装置による水表面起伏もセンシングデータとして利用する。アクチュエータとしては、ロボットアームによる水制構造物の模型の移動のほか、サーボモータによる動的な水制を試みる。流路の健全性として偏心の状態などを指標としてこれを報酬とし、流路制御のための強化学習を行う。この強化学習の主な目的は以下の2点である。 - 河川流路変動のメカニズム解明の参考データとする。 - 実河川での流路の動的制御への適用可能性について検討する。 9月までに本システムのプロトタイプを構築し、10月までにデモンストレーションを実施し、11月にはデータを公表する計画である。COVID-19の影響で、河川模型実験が行えない場合においても、仮想実験環境の構築に取り組み同CPSのシミュレーション実験を進める。適宜、学会発表や論文投稿を行い、より発展的な研究につなげるための礎を築く。
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Causes of Carryover |
2020年3月に沖縄にて開催が予定されていた研究会がCOVID-19の影響によりキャンセルとなり発表者2名分の旅費を2019年度内に利用できなくなった。2020年度の成果発表旅費,論文校正および論文掲載費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)