2021 Fiscal Year Research-status Report
微生物のシデロフォアが関与するヨシの鉄プラーク形成機構の解明
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19K22151
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山路 恵子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00420076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 万也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (60377992)
香西 直文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (80354877)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヨシ / 内生細菌 / 重金属蓄積 |
Outline of Annual Research Achievements |
U鉱山の鉱さいたいせき場で自生している湿生植物のヨシは、Fe、Mn及びUを蓄積することが本研究により明らかになった。またヨシは根の周囲に鉄プラークという水酸化鉄の沈着を形成することが報告されているが、本調査地のヨシについても、鉄プラークがUや金属元素の蓄積部位として機能している可能性が示唆された。今年度は、1)ヨシの鉄プラークにおけるU蓄積の確認とFeの化学形態の解明、2)内生細菌のシデロフォアが関与した鉄プラークの形成機構の解明、について行った。1)について、SPring-8のBL37XUによってヨシの鉄プラークにおける鉄およびウランの局在部位を観察した結果、鉄プラークにはFeと共にUやMnが局在していた。また、鉄プラークにおけるFeの化学形態を明らかにするために、高エネルギー加速器研究機構のBL4Aにおいて鉄プラークのXANESを測定した結果、約90%がフェリハイドライトであることが明らかとなった。2)については、細菌が産生する金属元素と錯体形成する化合物(シデロフォア)にはカテコール骨格を有する化合物が報告されているが、本構造を有する化合物はFeとの沈殿を形成する報告があるため、内生細菌が産生するシデロフォアが鉄プラークの形成に関与する可能性が考えられた。実験を行った結果、シデロフォア活性を示したPseudomonas属細菌、Rhizobium属細菌の培養濾液と二価あるいは三価のFeイオンを混合させた際に沈殿物が生じることが確認され、また、これらの培養濾液にはシデロフォアと考えられるフェノール性化合物が検出された。以上の結果より、節根から分離した内生細菌のシデロフォアが金属蓄積部位である鉄プラークの形成に関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後の課題は下記になる。1)内生細菌の培養濾液と二価あるいは三価のFeイオンを混合させた際に生じた沈殿物のFeの化学形態を明らかにすること、2)(可能であれば)内生細菌の産生するシデロフォアを単離・同定すること、である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)内生細菌の培養濾液と二価あるいは三価のFeイオンを混合させた際に生じた沈殿物のFeの化学形態を明らかにすること、については、XANESを測定を実施できればと考える。また、2)(可能であれば)内生細菌の産生するシデロフォアを単離・同定すること、については、研究実施期間内に実施可能かどうかは化合物の特性に依存する可能性が高い。予定としては、分離条件を検討後、大量培養を行い単離をし、MSおよびNMR等の機器分析に供することで同定を行う。
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Causes of Carryover |
先に述べた今後の課題( 1)内生細菌の培養濾液と二価あるいは三価のFeイオンを混合させた際に生じた沈殿物のFeの化学形態を明らかにすること、2)内生細菌の産生するシデロフォアを分離・同定すること)の遂行にあたり、分析費用および人件費が必要となるため。
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