2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K22383
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
五島 剛太 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20447840)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 分裂酵母必須遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、モデル生物種では生育に必須であると示された遺伝子が、別の種では進化の過程で失われるという例が数多く認められた。これは、生物種によっては、必要不可欠と思われていた遺伝子がなくとも増殖可能であることを意味しており、その生物種には必須遺伝子がなくとも増殖を可能にする未発見の仕組みが存在することを示唆している。本研究では、真核細胞内の必須活動には、よく知られた「主要機構」だけでなく、これまで見逃されてきた「サブ機構」が存在し、特定の細胞種や環境下ではサブ機構が極めて重要な役割を担うという仮説を立てる。そして単細胞真核生物・分裂酵母を用いてこの機構の網羅的同定に挑み、細胞の備わった機構の全貌を解明する基盤の確立を目指している。 19年度に、92の必須遺伝子のうち、20もの遺伝子について、他の遺伝子を人為的に変異させることで、本来なら増殖不可能な酵母の増殖能を回復させられた。一部のケースについて酵母ゲノムのDNA配列を解析したとこと、未知だった代替機能が亢進した可能性が示唆された(Takeda et al. 2019)。20年度からは、細胞分裂期の初期から最終盤にかけて幅広く重要な働きするとされてきたキナーゼ(Polo)を完全に欠失した分裂酵母が、複数のサプレッサー変異により生存率を回復することを見出したため、詳しい解析を行った。興味深いことに、サプレッサー変異の中には、この遺伝子産物の下流で働くとされてきた微小管生成因子やグルコース代謝に関する遺伝子が含まれ、さらには、生存を回復するために別のキナーゼ(CK1)が機能する必要があることを発見した。すなわち、CK1はサブ機構を担っていた(Kim and Goshima. 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的に合致した研究成果をひとつ論文として発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見つけた「サブ機構」を担う遺伝子は他にも存在することがわかったため、それを明らかにすべく実験を進める。
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Causes of Carryover |
21年度より大学による論文掲載支援が始まり論文掲載料(約60万円)の補助が受けられたこと、コロナ禍で参加予定学会の現地開催がなくなったこと、消耗品にかかる費用を節約できたこと、一部のプロジェクトに遅れが生じたことが主因である。今後、主に消耗品や遅れていたプロジェクトを遂行する技術補助員の雇用費に使用予定である。
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