2021 Fiscal Year Annual Research Report
シングルセルATP分析・分離技術を用いたエネルギー代謝リモデリング機構の解析
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19K22386
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 博臣 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20422545)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | CRISPR / エネルギー代謝 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
正常細胞はのATP合成は、主にミトコンドリアにおける酸化的リン酸化が担っている。一方、がん細胞はATPの合成を解糖系に極度に依存しているため、解糖系の代謝回転を維持するために重要なLDHを阻害することで細胞内ATPの維持および生存が困難になると予想された。ヒト由来がん細胞株であるHeLa細胞とA549細胞に対して、構造の異なる2種類のLDH阻害剤オキサム酸ナトリウムおよびNHI-2で処理したところ、オキサム酸処理では速やかな細胞内ATP濃度の低下が観察された一方、NHI-2では細胞内ATP濃度の低下は緩やかであった。また、どちらの阻害剤処理によっても細胞死の誘導が観察された。 次に、室温でおこなうFACSに最適化した蛍光ATPバイオセンサーであるATeamNL2を発現したHeLa細胞およびA549細胞に、ゲノムワイドなCRISPRノックアウトレンチウイルスライブラリーを感染させたのち、オキサム酸ナトリウム処理をおこない、FACSで細胞内ATP濃度を調べた。多くの細胞ではATP濃度が低下していたが、ATPの低下していないごく一部の細胞を集めて増殖させた。増殖した細胞に再度オキサム酸ナトリウム処理をおこない、ATPが低下していない細胞を集めた。この作業を繰り返すことで、オキサム酸ナトリウム処理をおこなってもATPが低下しない細胞を濃縮することに成功した。この細胞集団には、がん細胞において酸化的リン酸化から解糖系へとエネルギー代謝がスイッチするために重要な遺伝子がノックアウトされている可能性が高いと考えられる。
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