2020 Fiscal Year Research-status Report
AI霊長類学者の誕生を目指した行動観察システムの確立
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19K22456
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 一憲 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (80506999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 明教 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (00723868)
寺田 和憲 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30345798)
上野 将敬 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30737432)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 比較行動学 / 霊長類学 / 深層学習 / PredNet / 個体識別 / 物体追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンザルをスマートフォンで撮影することで、個体の名前や特徴がAR(拡張現実)として、表示されるシステムの構築を目指している。 ①上記システムを構築するためには、映像の中で移動するニホンザルを検出して追従する物体追跡の技術が必要となる。本年度は飼育ニホンザルの行動を撮影し、その動きを追跡するアルゴリズムの開発を行った。従来法と比較して、精度の高い手法を提案することができた。 ②上記システムを、日本各地の野猿公苑で実用化できるよう、一般企業と打ち合わせを行った。 ③ヒトがニホンザルを個体識別する能力を検討した。十分なキャリアのある霊長類研究者と霊長類研究者ではない研究協力者を対象に、新規なニホンザル画像を弁別する精度を評価した。経験を積んだ霊長類研究者は、霊長類研究者ではない研究協力者よりも、ある個体の写真と別の個体の写真をより正しく弁別することができた。十分なキャリアのある霊長類研究者が用いる弁別方略について、考察を行った。 ④本年度は、新型コロナウイルスの流行により、研究者がフィールドに行って、ニホンザルの観察を実施することが難しかった。ニホンザルは春に出産期を迎えるため、新しく誕生したアカンボウの記録(母ザルは誰か、いつ誕生したか、オスかメスか)を収集できず、1958年より継続してきた勝山ニホンザル集団の人口動態学的データに大きな欠損が生じる危険性もあった。しかし個体識別ができない野猿公園の職員であっても、出産した個体の写真をスマートフォンで撮影し、開発した個体識別のアルゴリズムにかけることで、我々霊長類研究者が現場で個体識別することなく、誰が出産したのかを判別することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニホンザルの運動を予測して追従する物体追跡の技術の精度向上を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
人獣共通感染症の懸念は、本研究を立案する際の着想の一つであった。本研究の実施期間中に実際に感染症が大流行し、霊長類研究者が野生霊長類を観察できなくなる状況に陥っただけでなく、開発した個体識別アルゴリズムを利用することで、研究者がフィールドを訪れることなくデータ収集が継続できたことは、驚きであった。次年度も現地の研究支援者に開発したアルゴリズムを利用してもらうことで、継続的なデータ収集を実施する。さらに緊急事態宣言の解除など、フィールドを訪問することが可能になれば、できるだけ多く滞在し、アルゴリズム開発の材料となる基礎データの収集を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスの流行により、フィールドに行って調査をおこなうことができなかった。感染症の流行具合にもよるものの、次年度はできるだけフィールドにいってデータ収集を行いたい。
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Research Products
(2 results)