2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of fish spawning migration: testing the olfactory imprinting hypothesis
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19K22462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
奥田 昇 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (30380281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 佳敏 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (10759442) [Withdrawn]
小北 智之 九州大学, 農学研究院, 教授 (60372835)
大久保 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60280814)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 産卵回遊 / 嗅覚記憶 / 耳石 / RNAseq / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)耳石の地球化学解析を用いた回遊履歴推定手法の適用:硬組織である魚類耳石を用いて研究対象種となるフナ類の生息環境履歴を個体レベルで推定するために、2021年度はニゴロブナ・ギンブナの産卵遡上親魚39尾、水田水路で生育した稚魚45尾から耳石を採取した。しかし、新型コロナウイルス感染症蔓延防止措置の度重なる発令により高エネルギー研究所が所有する硬X線吸収微細構造解析装置を利用して耳石の解析を実施することができなかった。 2)嗅覚記憶の至近メカニズムの実験的検証:ニゴロブナの母田回帰能を検証するために野生産卵遡上親魚を用いて遡上水路の選好性実験を行った。野生親魚は、遡上水路水に対して有意な正の選好性を示し、雄より雌で選好性が高い傾向を示した。 3)嗅覚記憶に関与する遺伝子の網羅的発現解析:2020-2021年度に採集した琵琶湖固有の回遊種ニゴロブナと非回遊性近縁種ギンブナの内、それぞれの成魚を8尾、ニゴロブナの稚魚7尾とギンブナの稚魚8尾について、嗅覚・脳神経系組織(嗅上皮・嗅球・終脳)からRNAを抽出し、遺伝子発現パタンを調べるためにRNAseqに供試した。得られたリードをキンギョのリファレンスゲノムにマッピングし、2種の成魚および稚魚において発現量に差が見られる遺伝子を検出した。さらに、GO解析を用いて、それら遺伝子の機能的特徴を調べた。解析の結果、成魚では、ギンブナに較べてニゴロブナの嗅上皮で神経系や嗅覚受容体関連の遺伝子が高発現していた。終脳では、約3,000種の遺伝子で発現量変動が観察されたが、嗅覚記憶との関連が示唆される特定の遺伝子は検出されなかった。稚魚では、ニゴロブナの嗅上皮・嗅球・終脳いずれの組織でもミトコンドリアなど代謝関連遺伝子の発現量が有意に増減していたが、嗅覚・記憶と関連した遺伝子群での発現差異は検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が緩和され、野外採集調査に基づくフナ類の遺伝子発現解析は計画通り順調に進展した。他方、フナ類の回遊履歴を推定するために耳石の硬X線解析を行う計画に関しては、講義のない夏季および冬季休暇中に共同利用施設である高エネルギー加速器研究機構に滞在して短期集中的に解析作業を実施する予定であったが、同時期にデルタ株およびオミクロン株の感染がそれぞれ拡大し、新型コロナウイルス感染症蔓延防止等重点措置が発令されたため、延期を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症蔓延防止等重点措置が解除された今年度中に高エネルギー加速器研究機構の共同利用施設を利用して耳石の硬X線解析を完了することを目指す。万が一、コロナウイルスの感染再拡大によって、再び関東エリアへの移動が制限されることになった場合、京都に所在する総合地球環境学研究所の共同利用施設である表面電離質量分析装置(TIMS)を利用して耳石のストロンチウム安定同位体分析を用いた回遊履歴推定に研究計画を柔軟に変更することを検討する。
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Causes of Carryover |
研究を開始した2019年度の翌年以降、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言および蔓延防止措置の度重なる発令により野外調査活動や共同利用機関での分析が延期・縮小されたため研究終了年度に予定通り計画を完了することができなかった。2022年度は、嗅覚記憶仮説の実験的検証および耳石の地球化学的解析に経費を配分する。
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Research Products
(3 results)