2021 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジン受容体の多量体化の意義と創薬への応用
Project/Area Number |
19K22503
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉本 幸彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (80243038)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / プロスタノイド / 多量体化 / GPCR / 構造活性相関 / シグナル伝達 / 逆作動薬 / ω3脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロスタグランジン(PG)は、細胞膜リン脂質に由来する脂質メディエーターであり、近傍に存在する8種類の細胞膜受容体GPCRに結合することで、発熱・分娩などの生理作用を発揮する。予備的結果と結晶構造解析の結果に基づき、Gi共役EP3受容体が作動薬結合に伴い、Gq共役FP受容体とヘテロ二量体を形成し、リガンド結合時間に依存してFPによるGq活性化(細胞内Ca2+動員)を増強することで、分娩時の子宮収縮を増強する可能性を見出した。本研究の目的は、PG受容体多量体化の解析系を確立し、GPCR多量体化を標的とした創薬基盤を確立することである。 本研究では、まずPG受容体ヘテロ二量体化の普遍性を検討したところ、EP3/FPに加えてEP3/EP1、EP1/FP間でも二量体を形成するが、EP3はmGluR1とは二量体を形成せず、PG受容体間に特異性をもつことを見出した。次に、作動薬依存的なEP3/FP多量体化のBRET解析系の確立を試みたが、作動薬依存的なBRETシグナル変動の検出が予想外に困難であり、安定な解析系の確立には至らなかった。一方、本解析系の検討過程で、EP4受容体によるβ-arrestin(βarr)活性化のBRET解析系においても、ヘテロ活性化と同様に、その効力がPGカルボン酸フリー体(PGE2 > PGE3) >> カルボン酸メチル体であることを見出し、PG受容体の多量体化はヘテロ受容体シグナルのみならず、βarr活性化にも必要とされる可能性を見出した。本挑戦的研究のコンセプトを発展させた研究を申請したところ、基盤研究(B)として採択された。従って、今後は、本挑戦的研究で得た成果を基盤に、脂質受容体のカルボン酸結合が、受容体二量体化の安定性に寄与し、G蛋白シグナル、ヘテロ受容体シグナル、βarrシグナル、の三者の活性化に果たす役割解明を目指したい。
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