2020 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌研究のパラダイムシフトを加速する新規オルガノイド培養系の開発
Project/Area Number |
19K22544
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 伸雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (30777769)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | オルガノイド / 腸内細菌 / 共培養システム / 嫌気性細菌 / プロバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでも腸内細菌は宿主恒常性維持に重要な役割をはたしていることが報告されているが,細菌と宿主間における相互作用について分子レベルで解明されているものは未だに少ない.その1つの要因として,嫌気性細菌である腸内細菌と好気性である宿主上皮細胞のin vitro共培養解析系が不足していたことが考えられた.そこでこの問題を解決するために,本課題研究ではヒト正常上皮細胞培養法(オルガノイド)の技術改良を行い,異なる酸素要求性を示す腸内細菌とヒト腸管上皮細胞の共培養システムを開発することにした. 昨年度は腸内細菌と直接的な相互作用を観察しやすくするために,ボイデンチャンバーを利用する方法や使用する細胞外基質の選定を行うことで,ヒト正常腸管上皮細胞を二次元で培養する方法を確立した.そこで本年度は,培地の適正化を図ることで,正常の腸管上皮細胞を二次元の状態のまま1ヶ月以上にわたり安定的に培養する方法の開発に取り組んだ.従来のオルガノイド培地に適切な成長因子をさらに加えたことで,腸管幹細胞の増殖が促されただけではなく,生体内の腸管上皮を構成している分化細胞の全てを分化誘導されている状態で,長期間培養できることが分かった. 次に我々は,この生理的な条件で培養された腸管上皮の頂端側のみ嫌気条件(酸素濃度0%)にするシステムを導入した.従来のオルガノイド培地と比べ,今回新しく開発した培地を使用すると,基底部から供給される酸素だけで,腸管上皮細胞を正常に維持できることが分かった.実際に嫌気条件となっている上皮細胞の頂端部に微量の偏性嫌気性細菌を添加し,数日間共培養を行ってみたところ,これらの細菌は腸管上皮の上で増殖し,コロニーを形成した.以上のことより,我々は嫌気性の腸内細菌と宿主上皮細胞を同時に培養する新規共培養システムを開発することに成功した.
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Research Products
(6 results)