2019 Fiscal Year Research-status Report
現実の記録と告発のためのリアリズム：マンゾーニ『婚約者』決定版のレトリック
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19K23076
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| Research Institution | Osaka University |
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Principal Investigator |
霜田 洋祐 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 助教 (80849034)
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| Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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| Keywords | イタリア文学 / マンゾーニ / 『婚約者』 / リアリズム / 挿絵 / 『汚名柱の記』 / 疫病文学 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イタリア近代文学を代表する作家アレッサンドロ・マンゾーニの主著『婚約者』の決定版（1840-42年）を総合的に分析するため、1825-27年の初版には見られなかった2つの要素、（１）巻末に付け加えられたノンフィクションの小作品『汚名柱の記』と（２）著者による指示により配置された挿絵について調査・分析を進めている。挿絵の研究のために、『婚約者』のテクストおよび挿絵とカラヴァッジョの絵画のリアリズムの関係を論じた近著で注目を集めたシエナ外国人大学のダニエラ・ブロージ氏とメール等で連絡を取り、日本へ招聘し研究打ち合わせや講演を行うことも企画した（ただし、新型コロナウィルスの影響で延期となっている）。『汚名柱の記』については、先行研究（マンゾーニが引用・参照する最重要テクストの一つであるピエトロ・ヴェッリ『拷問に関する諸考察』についての研究も含む）を収集する一方、マンゾーニが効果的に不正を告発するために用いるレトリックの一つを句読法（パンクチュエーション）の観点から分析することを目指し、句読法を中心とする言語・文体にかんする先行研究の調査・収集も始めている。また、1630年にミラノ を襲ったペスト禍のパニックの中で起きた冤罪事件というアクチュアルな問題を扱った『汚名柱の記』を広く紹介するため、翻訳を準備しているが、その中で、言語的改訂を経て地方的要素が削られた地の文とミラノの方言的要素を含んだ資料の引用部分の対照による効果の分析も進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内で可能な作業はある程度進めているが、新型コロナウィルスの影響で、予定していたイタリアでの資料収集を中止せざるを得ず、ダニエラ・ブロージ氏の来日も延期となったため、挿絵の研究にかんする貴重な助言が得られず、研究の動向を知るには不利な状況に置かれ、資料が十分にそろっているとは言えないため。
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| Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響でイタリアでの調査やイタリアの研究者の招聘はしばらく難しい状況が続くと予想される。WEBビデオ会議ツールの利用やオンラインで入手可能な資料の活用で足りない部分を補いたい。また、コロナ禍とペスト禍のアナロジーによりマンゾーニの『婚約者』のペストを扱った部分は注目を集めることとなり、マンゾーニの研究もイタリア国内外で新たな展開をみせる可能性があるため、その動向を把握し、研究の推進に活かしたい。
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| Causes of Carryover |
3月に予定していたイタリア（ミラノ）での資料収集・研究打ち合わせ、研究者招聘が新型コロナウィルス蔓延の影響で中止・延期となったため、予定に反して年度内に旅費・謝金を使用しなかったため。
なお、招聘研究者へのすみやかな旅費・謝金の支給のため、科研費による物品購入は控えていた。
次年度内に可能となればイタリアでの在外研究、研究者招聘を行うために使用する。
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