2020 Fiscal Year Research-status Report
植民地朝鮮・台湾・満州における文楽(義太夫)享受の諸相に関する調査・研究
Project/Area Number |
19K23082
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
韓 京子 青山学院大学, 文学部, 准教授 (30844774)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 近代在外日本人の芸能活動 / 文楽の海外公演 / 素義会の活動 / 植民地における日本古典芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植民地朝鮮・台湾・満州における文楽(義太夫)享受の諸相について外地における伝統芸能の公演や内地人の娯楽としての芸能活動という観点から考察するものである。 本年度も依然としてCOVID-19感染拡大の状況下であったため、予定していた海外への資料調査は実施できなかった。したがって、日本国内で可能な調査として、まず、韓国の図書館に所蔵され、web上で閲覧可能な資料の調査を進めた。調査対象としては、朝鮮で刊行された雑誌類を主に扱った。植民地期朝鮮で刊行された雑誌からは、当時の在朝日本人の娯楽・芸事稽古に関する記事や植民地期朝鮮の劇場に関する記事を収集し分析を行った。また、日本国内に所蔵されている資料では、新義座や素人義太夫、女義に関する記事を『上方芸能』『浄瑠璃雑誌』『上方』などを中心に収集し、調査を行った。『上方芸能』は戦後の創刊であるが、大正から昭和にかけて「義太夫」で活躍した人物の体験談が掲載されている。 以上の調査から、植民地朝鮮における在朝日本人の素人による芸能公演や競演、日本古典芸能に関する認識、日本から植民地朝鮮・満洲へと渡航、巡業した経緯・様子などを知ることができた。新しい娯楽の登場や戦時下ということから日本国内では伝統芸能の人気は衰えたが、外地においては必ずしもそうではなかったということを明らかにすることができた。今後、興行の実態や内地人の素義会の活動を具体的に調査しその全体像を明らかにし、外地に住む人々にとっての古典芸能(文楽)の意味を探っていく予定である。 以上のように、今まで調査した内容をもとに、6月に開催される韓国日語日本文学会で発表報告を行い、論文としてまとめ執筆する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19感染拡大により、海外に所蔵されている資料調査が予定通りに調査できなかった。上記のように、web上で閲覧できる海外所蔵資料を用いて調査収集を行ったが、予定していたほど進捗してはいない。国内の資料調査も、同様である。国会図書館や早稲田演劇博物館、松竹図書館、国立劇場資料室なども限定的な開館となっており、今後も資料収集や調査に支障が生じると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当分の間は、上記のようにweb上で閲覧できる海外・国内所蔵資料や、都内の図書館や機関に所蔵されている資料を中心に調査を続ける。 国内移動、海外渡航禁止が解除(緩和)され、各種図書館への調査が円滑に実施されれば、国内外の機関所蔵の資料調査を行う予定である。 現時点で収集・分析した資料をもとに、2021年6月には、韓国日語日本文学会で発表報告を行い、学会での参加者からのコメントやご教示をもとに、論文を執筆し、学術誌に投稿する予定である。また、調査・分析をつづけ、2022年8月、台湾の台北(於中国文化大学)で開催される第六回AFC(アジア未来会議)にて、発表報告する予定である。
|
Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響により国内・海外の機関所蔵の資料調査に大きな支障が生じた。 国内移動、海外渡航禁止が解除(緩和)され、各種図書館への調査が円滑に実施されれば、国内・海外の機関所蔵の資料調査を行う予定である。研究費は資料調査のための旅費として、使用する予定である
|