2023 Fiscal Year Annual Research Report
農業地域における技術進化の過程とメカニズム―日本の米品種の変遷を事例として―
Project/Area Number |
19K23130
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小林 基 摂南大学, 国際学部, 講師 (10845241)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 水田稲作 / 新田開発 / 農業水利 / 農耕文化 / 遊戯的イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はプロジェクトの最終年度として、昨年度では実施しきれなかった報告書作成のための情報収集等を引き続き実施した。具体的には、日本およびアジア稲作農耕文化に関する文献の収集や農村地域での生業構造に関する聞き取り調査を実施し、最終的な報告書作成のためのデータの補完を行った。これにより、本研究で得られた成果が補強されたほか、意義と位置づけが明確化されることとなった。他方で、アジアおよび日本の稲作文化史上における水稲品種論との関係性から、また近世後期以降の発展経路とは別方向の稲作農耕の可能性についてさらに深掘りする必要性も浮かび上がってきた。 さらに歴史学や考古学における農耕史分野の研究を参照すると、水田稲作における生産力の発展を主軸として社会経済構造変化を捉えようとする「農耕中心史観」を相対化するような研究成果が多数登場している状況を再確認した。報告者も含む農業イノベーション研究がこうした成果を看過している現状は大きな問題と考える。本研究では、生産力を上げることを目指すのではなく、省力化や余暇時間の拡大のためのイノベーションとしての品種選択の可能性が示唆されたと考えるが、とりわけ生産手段としての農耕ではなく、他生業との組み合わせを前提とした"play farming"(遊戯的農耕)に関する議論は、人口減少と高齢化、副業化や社会の流動化が進む現代において、農業イノベーションのオルタナティブな発展経路を示していると考える。
|