2019 Fiscal Year Research-status Report
17世紀ドイツにおける聖職者・神学者の法学的素養:ケルン選帝侯領を中心に
Project/Area Number |
19K23146
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 星 北海道大学, 法学研究科, 助教 (60844587)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 聖職者 / 刑法 / 神学 / 魔女裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世における法学と神学との関係の一端を明らかにする事を目的としている。そのためのアプローチとして、本研究では知識の担い手たちである神学部の学生たちに着目するという方法をとっている。 研究計画では、一年目には①神学部における法学に関してどのような教育が行われていたのか、②神学部を出た人々と、法学部を出た法律の専門家たちが、どのような場合に共に法律的な問題に関与するのか、③両者が同時に関与しうる具体的な事例としては魔女裁判が考えられるが、ケルン選帝侯領において聖職者や神学者はどのように魔女裁判に関与していたのか、を調査する予定であった。 まず、③については様々な関与の仕方があり得たことが判明している。直接的にそれぞれの具体的な裁判に関与するのは、処刑される犯罪者の罪の告白を聴く聴罪司祭であるが、他にも聖職者が村や町の代表者となって、お上に魔女裁判に関する要求や不満を届けるというケースもあった。間接的な関わり方には、魔女裁判への宗教的な支援(説教で魔女の危険性を訴えたり、裁判関係者の無事を公的に祈ったりする)のほか、かなり特殊なケースとしては神学部による魔女裁判マニュアルへの「書評」のような関与の仕方もあった。 ①および②について、ケルン大学神学部における教育状況については未だに不明なことが多い。どのような学生が在籍していたかを含めて、これらは今後の調査課題である。学生のその後のキャリアが追跡できれば、特に上記の②について考察を進めることができる。 2020年度においてはまずはこの①と②の調査を進める予定であるが、その上で研究計画を修正し、主として国内にいながら入手可能な文献をもとに法学者と神学者の意見の相違を調査したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による郵便等の遅延等により、必要な文献その他(ヨーロッパからの郵送物)が不着であったり、現地機関が機能していなかったり、研究者との連絡が不通となっているために、必要な調査に遅延が発生している。 また、新型肺炎感染拡大防止のための各種措置、とりわけ所属大学の付属図書館の時間短縮運営および、国内他大学からの文献相互貸借の停止により、研究活動に著しい支障が出ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画においては、二年目に渡独し直接史料を調査する予定であったが、①新型肺炎の国内及びドイツでの流行、②それに伴う渡独自粛要請、③感染拡大防止のための大学の学事暦の変更により、研究遂行のために必要な渡独期間を確保することが不可能となった。このため、研究の計画を大きく変更し、国内で入手可能な史料を用いて研究せざるを得ない。当初予定していたケルン大学に保管されていると思われる当時の学位論文の調査の計画は、放棄を余儀なくされている。幸い、フリードリヒ・シュペー『刑事的警告』やパウル・ライマンの著作など、著名な史料は国内でも入手可能なため、これらを利用することになるだろう。
|
Causes of Carryover |
年度末に発注された図書の購入につき、コロナ禍により発注が遅延、キャンセルされたために余剰が発生した。また、研究協力者への謝金を支払う予定であったが、これの成果の提出が遅れたため、支払いが次年度に繰り越された。
|