2020 Fiscal Year Annual Research Report
違憲審査基準の適用方法に関する体系的分析――合理性の基準と合憲性推定を中心に――
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19K23154
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 健 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (40849220)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 違憲審査基準 / 合理性の基準 / 合憲性推定 / 立法事実 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、令和元年度に選別し大まかに整理した合理性の基準に関するアメリカの判例の理論的な検討を進めた。 まず、アメリカの学説において提唱されていた「かみつく力をもった合理性の基準」という構想を参考にすることで、アメリカの判例における合理性の基準は、「最低限の合理性の基準」と「かみつく力をもった合理性の基準」の2種類に区別されうると考えて、検討を行った。その結果、アメリカの判例における「最低限の合理性の基準」と「かみつく力をもった合理性の基準」の実体論的な相違は、利益衡量の有無にあるとの知見を得た。この知見を基に、「合理性の基準」の具体的な内容を明らかにした上で、日本における標準的な合理性の基準は、「かみつく力をもった合理性の基準」と解すべきだとした。 次に、合理性の基準が適用される場合に訴訟当事者がどのような論証活動を行うべきかという問題に関連して、「合憲性推定」についても若干の検討を加えた。ここでは、「合憲性推定」のもつ意味を整理するとともに、その形式にヴァリエーションがあるとの知見を得た。 最後に、このようにして得られた検討結果を用いて、日本の判例の再構成も行った。ここでは、日本の判例における合理性の基準も、「最低限の合理性の基準」と「かみつく力をもった合理性の基準」に区別されうることを示した。 以上のように、令和2年度は、合理性の基準の実体論的な内容と、合理性の基準の下で訴訟当事者に求められる論証活動を検討した。これは、裁判所及び訴訟当事者に対する行為指針を提示するものであり、合理性の基準が適用されることの多い日本の裁判実務に対して大きな影響を与える可能性を秘めている点で、重要な意義を有している。なお、本研究から得られた成果は、令和3年3月に出版した『違憲審査基準論の構造分析』(成文堂)の補論として公表した。
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Research Products
(1 results)