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2020 Fiscal Year Research-status Report

紛争解決のためのメカニズムデザイン

Research Project

Project/Area Number 19K23200
Research InstitutionYokohama City University

Principal Investigator

中村 祐太  横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 講師 (30848932)

Project Period (FY) 2019-08-30 – 2022-03-31
Keywordsq / q
Outline of Annual Research Achievements

紛争解決のプロセスにおいて,具体的な解決案を提示する際には,紛争当事者たちが「どの解決案をどれだけ好んでいるか」という情報(=選好)を予め把握しておく必要がある.しかし,人々の選好は通常他人には分からない私的情報であるため,例え紛争当事者たちに「どの解決案を望むか?」と質問しても正直に答えてくれるとは限らない.
そこで,昨年度の研究では,準線形と呼ばれる環境下において,弱い効率性,個人合理性,耐戦略性という3つの性質を満たすメカニズムのうち,「パレート比較」において最も優位になるものを設計した.これら3つの性質のうち耐戦略性は「真の選好を申告することが各人の支配戦略になる」ことを要求するものであり,紛争当事者たちから真の情報を引き出すために不可欠である.ただし,昨年度に設計したメカニズムは耐戦略性を満たしはするものの,経済理論に精通していない一般の人々がそれを理解するのは難しいという課題が残されていた.
上記のような背景のもと,本年度の研究では,メカニズムの動学的な形式(Dynamic Form)についていかなる工夫を施せば,それが耐戦略的であることを人々により説得しやすいかを分析した.具体的には,Li (2017)が定義した「わかりやすい耐戦略性」の概念を拡張し,それよりも弱い均衡のクラスを新たに定義した上で,二つの主要定理を証明した.一つ目の主要定理では,意思決定理論の知識を応用し,人々がどの程度合理的であるならば,彼らの行動が本研究で定義した均衡に従うかを数学的に特徴付けた.二つ目の主要定理では,この新たな均衡概念を用いると,従来の理論では説明できなかった複数財オークションにおける人々の非合理性に関する実験結果をうまく説明できることを示した.これら二つの主要結果は本研究による新たな均衡概念の有用性を示すと共に,紛争解決における新たなメカニズムの設計を促進するものといえる.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度までに「研究実績の概要欄」に記載した成果を3本の論文にまとめた.そのうち1本は本年度中に査読付きの国際雑誌に掲載され,その他1本の論文が査読付きの国際雑誌から改訂要求を受けている.また,昨年度の研究では,メカニズムの「わかりやすさ」を示す測度を発見するのみに止まっていたが,本年度の研究ではそれを具体的な均衡概念のクラスとして定式化し,意思決定理論とオークション理論の両面からその均衡概念を用いることの理論的な正統性を示すことに成功した.一方で,新型コロナウイルスの蔓延により参加予定であった学会が次年度に延期されたこともあり,充分なフィードバックを得るためにはもう少々の時間が必要である.総括すると,専門家と意見交換する機会を今後積極的に設ける必要こそあるものの,本研究は順調に進展していると言える.

Strategy for Future Research Activity

昨年度の研究では,弱い効率性,個人合理性,耐戦略性という3つの性質を満たすメカニズムのうち,「パレート比較」において最も優位になるものを設計した.一方で,本年度の研究では,あるメカニズムが紛争当事者たちにとって「どの程度わかりやすいか」を示す均衡概念を定義することに成功した.
今後の推進方策としては,次に述べる三つの課題に取り組むこととする.第一に,これまでに設計したメカニズムが,本年度の研究によって定義された均衡のクラスのうち,どの程度強いものまでを満たすかを調べる.第二に,昨年度設計したメカニズムよりも紛争当事者にとって「わかりやすい」メカニズムが存在するのかを,新たな均衡を用いた理論的分析によって明らかにする.最後に,第一と第二の分析を総括することにより,いかなる動学的な形式を持つメカニズムが紛争当事者にとって最も「わかりやすい」ものなのかを明らかにする. 今後の研究では,これら3つの課題に取り組むことで,紛争を解決に導く「明瞭な」メカニズムを具体的に提示することを目標としたい.

Causes of Carryover

新型コロナウィルス蔓延により出張が中止になったため.次年度使用額は,学会参加費及びオンライン環境整備費として使用する予定である.

  • Research Products

    (1 results)

All 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] The uniqueness of the pivotal mechanisms without strategy-proofness2020

    • Author(s)
      Yuta Nakamura
    • Journal Title

      Review of Economic Design

      Volume: 24 Pages: 171-186

    • DOI

      10.1007/s10058-020-00236-1

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2021-12-27  

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