2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23202
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
那須田 晃子 大東文化大学, 経済学部, 助教 (10847213)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 農村電化 / インフラ整備 / 労働市場 / 家事労働 / 時間使用データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、農村電化が個人の就労行動に与える影響を、カンボジアのマイクロ・データを用いて明らかにすることである。農村電化は新技術導入を可能にし、様々な生産性を高める。人々の就労行動が変化することで家計所得が増加し、途上国の経済発展に寄与することが期待されている。 農村電化は、小型家電の導入や近代的な調理法の導入により、家事労働時間の短縮と経済活動時間の増加をもたらす。この結果、主に家事労働を担ってきた女性の就業率が、農村電化によってもたらされることが先行研究で指摘されている。しかし家計調査から実際の家事労働時間データを取得することは容易ではなく、電化と個人の時間配分変化についての実証分析は十分に行われてこなかった。 本研究では、カンボジア社会経済調査2004 (Cambodia Socio-Economic Survey 2004)に含まれる時間使用データから家事労働時間を計測し、電化が個人の時間配分に与える影響分析を行った。カンボジアの文脈では、電化地域は未電化地域と比較して、男性の家事労働時間が短く、経済活動時間が長いことが明らかになった。一方で、女性については時間配分の差がほとんど観察されなかった。より具体的には、男性が主に担っていた薪集めの時間が短くなっていたことが明らかになった。家計支出データを分析すると、電化地域に居住する家計は、薪や木炭の現金での購入量が多く、市場を通じた取引が活発となっている可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた問題意識に基づいてデータ収集と整理を行った。データを用いた計量分析を行い主要な結果を得ている。またカンボジア国内では比較的早くに電力整備が行われたスバイリエン州農村での聞き取り調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は家事労働時間を分析するために、時間使用データを主に使用した分析を行った。このデータは個人の詳細な時間配分を分析するのに適しているが、2004年の家計調査でのみ取得されたため、時間を通じた変化を捉えることができなかった。一方で、「薪集め」や「水汲み」といった一部の家事労働に限定すれば、複数年のデータが使用可能である。令和元年度で得られた主要結果を、地域パネル・データを用いた分析に拡張し、頑健性を確認する。また令和2年度は、国内外のセミナーや学会での報告を積極的に行い、査読付き国際学術雑誌への投稿をできるだけ早期に目指す。
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Causes of Carryover |
2020年3月に追加的な現地調査を計画していたが、新型コロナウィルスの影響で実施することができなかったため。次年度での状況を鑑みて、追加的な現地調査の実施を再度検討する。
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Research Products
(2 results)