2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Dynamism of Environmental Governance on the Riverbed of the Iwaki River
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19K23250
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
寺林 暁良 北星学園大学, 文学部, 講師 (60847656)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 環境ガバナンス / ガバナンスのダイナミズム / 複数の利害 / 岩木川 / ヨシ原 / 過少利用 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、青森県の岩木川河川敷ヨシ原の管理を事例として、どうすれば環境ガバナンスがダイナミズムをともないながらも維持されるのかという要件を抽出することである。 2019年度は、青森県中泊町岩木川下流部のヨシ原管理に関連して国道交通省や中泊町役場、現地住民へのヒアリング調査を実施したほか、比較対象として大阪府高槻市鵜殿地区でのヨシ原管理について高槻市役所へのヒアリング調査を実施した。また、青森県立図書館などで関連する文献収集も実施した。これらの現地調査および文献調査によって得られた質的データは質的データ分析ソフト(MAX QDA)に蓄積し、分析作業を進めた。 質的データ分析の結果、例えば以下のような着目点が浮かび上がった。第一に、地域住民の世代交代による自然資源との関係の希薄化とそれによる環境ガバナンスの論理の変容である。いわゆる「近代化」以前は、生活と自然資源の利用が密接に関係していたが、こうした生活を知らない世代が地域の要職に就き始めているなかで、地域住民が自然資源管理に携わる動機付けは大きく変容している。住民主導の環境ガバナンスの継続には、新たな論理の構築が必要である。第二に、行政機関の担当者の入れ替わりによる環境ガバナンスの論理の変容である。行政機関の担当者は比較的短い期間で交代するが、その過程で環境ガバナンスにおける情報が取捨選択され、単純化・明確化しうる。第三に、行政機関や地域住民の環境ガバナンスの論理の変容に対する研究者(専門家)の役割である。研究者がコーディネーターとして環境ガバナンスに携わり続けることは、特に行政機関の担当者交代や地域住民の世代交代の際に、環境ガバナンスの論理構築に大きな影響を与えうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、順調に進展しているといえる。2019年度は、計画どおり青森県中泊町岩木川下流部のヨシ原管理に関連して国道交通省や中泊町役場、現地住民へのヒアリング調査を実施することができた。また、比較対象として大阪府高槻市鵜殿地区でのヨシ原管理について高槻市役所へのヒアリング調査を実施したほか、青森県立図書館などで関連する文献収集も行った。これらの調査によって得られた質的データの分析も進展しており、学会発表や論文などの研究成果として公表する準備も整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる2020年度は、前年度に実施した調査を精査した上で、地域住民や行政機関へのヒアリングを中心に追加調査を行う。同年度は特に、各アクターにとっての環境ガバナンスの論理について精査な分析を行う。また、同年度は、調査結果を学会発表や学術論文として取りまとめる。さらに翌年度以降の学術書(単著)の出版に向け、原稿執筆を行う。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行が長引くことで、調査の中止や延期、成果公表の後ずれの可能性はある。
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Causes of Carryover |
2020年3月に鹿児島県奄美市での3泊4日の調査を予定していたものの、新型コロナウィルス感染症流行の影響で出張を取りやめざるを得なかった。そのため、同調査の交通費や宿泊費等にあてる予定であった金額が次年度使用額となった。
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