2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のセルフ・ネグレクトに影響を及ぼす要因に関する日韓比較研究
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19K23259
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
鄭 煕聖 関東学院大学, 社会学部, 准教授 (80844092)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | セルフ・ネグレクト / 独居高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、日韓両国におけるセルフ・ネグレクトへの予防・支援モデルの構築を目的に、従来の研究において等閑視されがちであった当事者の視点及び心理・社会的要因の解明に着目して、セルフ・ネグレクトとそれに影響する要因との因果関係を実証的に検討する基礎研究である。研究の目的を達成するための研究課題は、次の3点があげられる。1)日常生活動作と心理社会的要因(経済的状況・家族関係・喪失感・健康状態・対人関係)がセルフ・ネグレクトにどれほど影響を及ぼし、その間にソーシャルサポートと自己統制感の調節効果を検証すること。2)セルフ・ネグレクトが精神健康と自殺念慮にどれほど影響を及ぼすかを明らかにすると同時に、研究課題1の結果から得た知見を踏まえて高齢者の精神健康と自殺念慮に影響する要因を多角的に検討するこ と。3)研究課題1・研究課題2の結果を考察し、日韓比較を試みることである。 2019年度から日韓両国において、一人暮らし高齢者を対象にアンケート調査を実施した。具体的には、韓国調査は2019年10月から11月までA市に在住する独居高齢者406名を対象に訪問面接調査を実施した。その成果として、セルフ・ネグレクトの程度が悪いほど自殺念慮の程度が高いこと、手段的日常生活動作とセルフ・ネグレクトとの関係において情緒的サポートが有意な調節効果をもつことなどを明らかにした。日本では2020年3月から10月までB市に在住する高齢者を対象に郵送調査を実施したが、新型コロナウイルスの拡大により調査が中止になるなど計画通りに進めることができなかった。調査票は131部が回収された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
日本におけるアンケート調査の実施期間(2021年3月-5月)が予定通りに遂行できなかったため、10月までに延長したものの、新型コロナウイルス感染症の影響が続き、調査は中止となった。コロナの拡大が収まらない中で、新しい機関に調査の協力を得ることも現実的には厳しい状況でった。なお、2021年4月より、関西地方から関東地方への転職が決まり、それに伴う不慣れな環境ということも研究が遅れた理由の一つである。その結果、データの分析ならびに論文執筆にも差し支えが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本調査から得たデータは量的に分析を実施し、その結果は論文としてまとめる。その上で、日韓両国における調査結果の比較検討を試み、特に心理社会的要因(韓国調査から得られたデータを分析した結果では、高齢者が危機的ライフイベントを通してセルフ・ネグレクト状態となり、このプロセスの中で心理的要因の媒介効果が明らかになった)と、セルフ・ネグレクトの関連を比較検討する。その結果を基に、高齢者がセルフ・ネグレクトに陥った場合、なぜ、その背景を個人レベルではなく社会レベルとして捉え直す必要があるのかに着目しつつ考察を深め、セルフ・ネグレクトの予防・支援モデルの構築に向けた課題を提 示する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は不十分な成果発表が挙げられる。未使用額の使用計画については「研究成果の発表」が目的であり、関連資料の購入、学会参加とそれに伴う滞在費、論文投稿に必要な諸費用等が考えられる。
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